出版社内容情報
彼は「手が……アルマジロの手が」というばかりだったのです――。不気味な緊張感を孕む怪奇な作品「アルマジロの手」、美しい姫君に恋をした狸の哀切「心中狸」、むさぼり喰らう快楽にとり憑かれた男の無上の幸福「月と鮟鱇男」の他、「海亀祭の夜」「蓮根ボーイ」「鰻池のナルシス」、そして甘美な爛熟世界に堕ちた男を描く傑作「魔楽」を収録。官能の深みと生の哀しみを短編に昇華させた七編。
内容説明
彼は「手が…アルマジロの手が」というばかりだったのです―。不気味な緊張感を孕む怪奇な作品「アルマジロの手」、美しい姫君に恋をした狸の哀切「心中狸」、むさぼり喰らう快楽にとり憑かれた男の無上の幸福「月と鮟鱇男」の他、「海亀祭の夜」「蓮根ボーイ」「鰻池のナルシス」、そして甘美な爛熟世界に堕ちた男を描く傑作「魔楽」を収録。官能の深みと生の哀しみを短編に昇華させた七編。
著者等紹介
宇能鴻一郎[ウノコウイチロウ]
1934(昭和9)年生れ。東京大学文学部国文学科卒業後、同大学院博士課程中退。在学中に発表した短編「光りの飢え」が芥川賞候補となり、翌’62年、「鯨神」で第46回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
128
宇能鴻一郎の小説は、アク抜きしていない食材で作った料理か。当然、吐きそうなほどクセが強く、普通の美食家なら悪食として退けるだろうが、食べ慣れると独特の苦みやえぐみがないと物足りなくなってしまう。性と暴力と狂気というアクがたっぷりの作品を集めた『姫君を喰う話』に対し、本書では人の妄執が動物に憑依したかのような諸編を集めた。アルマジロやタヌキ、アンコウにウミガメ、ウナギにザリガニに象徴される生の残酷さと、そこへ進んでしがみつく恐ろしさは毒を飲まされている気分だ。最後の『魔薬』の主人公は三島由紀夫かと錯覚した。2024/03/01
藤月はな(灯れ松明の火)
58
ラテンの雰囲気に誘発された、軽佻浮薄な恋に水を差した怪奇譚「アルマジロの手」。それは愛し方の加減が分からないからこその不気味さだが、不思議といじましさを覚えてならない。後、アルマジロの解体を嬉々として撮り、早くも銭勘定する加納には腹が立つ余り、「映画『食人族』のようになっちまえ!」と思っていましたがオチにニヤリ。そして姫君を愛する余り、玉体からの不浄を喰らい、醜さを恥じるが為に若き武者との契りを許し、最後まで当て馬となる狸や、哀れな「心中狸」。雰囲気や終わり方は横溝正史の「貝やぐら綺譚」を踏襲するかのよう2024/06/07
Shoji
38
7編の短編が収録されています。どのお話も、直截的なエロティシズムやグロテスクな描写はありません。しかし、官能的な想像力は掻き立てられます。動物を織り込んだお話が多く、ナマズ、レンコン、ウミガメ、アルマジロ、アンコウといった動植物が持つ「粘性」が、想像力を掻き立てるからでしょうか。なんとも不思議な気持ちで読みました。面白かったですよ。ただ、毒々しいお話もありますので、ご注意を。いや、お楽しみを。2024/03/26
空猫
25
傑作短編集第2弾。変態作品は多々あるが、宇能氏のそれは粘着質で嗜虐的な変態サンなのだ。『心中狸』『月と鮟鱇男』は嫌われているのを承知で惚れた女にかしずく狸と男が主人公…心の底から、好きになった相手の身体ならば、足の裏でも尻の穴でも…(p69)結末の違いに(>0<;)。戦後の日本にはこんな子供達が少なくなかった『蓮根ボーイ』、『アルマジロの手』『魔楽』よくある話なのにこんなにも残酷なんて!!報われなくてもしがみつき、手にすればむしゃぶりついていく…舌、手の感覚、口に含み、齧み、匂う…その生々しさ…2024/08/14
タカギ
24
初めて読んだ。官能的、という惹句に誘われて…。たしかに。すべての話にフェチズムがある。それに、とても美しい文章。官能的であると同時に、滑稽であったり、不気味であったり、おそろしかったりする。「蓮根ボーイ」がこわかった。「鰻池のナルシス」は鰻を食べるのが好きで好きでたまらない、というだけでも、けっこう気持ちが悪い。おもしろかったです。ほかの話も読みたい。2025/05/06
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