出版社内容情報
煙と客が充満するモツ焼き屋で、隣席の男が語り出した話とは……戦慄の表題作。巨鯨と人間の命のやりとりを神話にまで高めた芥川賞受賞作「鯨神」、すらりとした小麦色の脚が意外な結末を呼ぶ「花魁小桜の足」、村に現れた女祈?師の異様な事件「西洋祈りの女」、倒錯の哀しみが詩情を湛える「ズロース挽歌」、石汁地蔵の奇怪なる物語「リソペディオンの呪い」。圧巻の迫力に満ちた六編。
内容説明
煙と客が充満するモツ焼き屋で、隣席の男が語り出した話とは…戦慄の表題作。巨鯨と人間の命のやりとりを神話にまで高めた芥川賞受賞作「鯨神」、すらりとした小麦色の脚が意外な結末を呼ぶ「花魁小桜の足」、村に現れた女祈祷師の異様な事件「西洋祈りの女」、倒錯の哀しみが詩情を湛える「ズロース挽歌」、石汁地蔵の奇怪なる物語「リソペディオンの呪い」。圧倒的な迫力に満ちた至高の六編。
著者等紹介
宇能鴻一郎[ウノコウイチロウ]
1934(昭和9)年生れ。東京大学文学部国文学科卒業後、同大学院博士課程中退。在学中に発表した短編「光りの飢え」が芥川賞候補となり、翌’62年、「鯨神」で第46回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
224
初 宇能 鴻一郎は、小学校の中学年の頃(今思えば、何たるマセ餓鬼)、新潮文庫の新刊を見かけたので、久々宇能 鴻一郎を読みました。芥川賞受賞作『鯨神』を含め、全て初読でした。やはり著者は、純文学ではなく官能小説が好いです。オススメは、表題作『姫君を喰う話』&『花魁小桜の足』&『ズロース挽歌』です。 https://www.shinchosha.co.jp/book/103051/ 【読メエロ部】2021/10/15
パトラッシュ
150
ポルノ作家に転向する前の宇能鴻一郎が、これほど強烈な性と死に満ちた作品を書いていたとは。人肉喰いに巨鯨との死闘、田舎の残酷な風習や女性拉致、障害者差別など現代作家なら怖くて扱えない題材を性を通じて描き、どうしようもない虚飾だらけで救いのない人の本質を突きつめていく。「願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」という柳田國男の思いは、この本で実現できたといえるかもしれない。差別反対など「政治的な正しさ」を優先する臆病な物書き連中から失われた、悪夢を見させるほどの文学の迫力と容赦のなさにノックダウンさせられる。2021/10/01
hit4papa
90
少年の頃、大人の世界を垣間見させてくれた官能小説の巨匠、宇能鴻一郎の文芸作品集。とはいえ、読んでいて気恥ずかしくなる性的な表現が多々見られます。独特の世界観というべきでしょうか、途中、何処に連れて行かれるか分からないまま、ラストのハッとする残酷さを味わいます。芥川賞受賞作「鯨神」は、伝説の巨鯨と闘う男たちを描いたスリリングな作品です。この作品だけでも本日を手にする価値はあるでしょう。その他、殉教者の志を持つキリシタンの花魁「花魁小桜の足」、代々に渡って祟られた男の末路「リソペディオンの呪い」など。2022/08/29
じいじ
87
著者が官能小説で一世を風靡したのは、昔何冊か読んだので知ってはいた。さて、偶々新刊コーナーで手にした今作、篠田節子氏の帯コピーと解説で読んでみたくなった。表題作からの6篇。いきなりの殺伐とした屠殺場の描写に度肝を抜かれる。3・4日は焼肉(とりわけ好物の内臓―モツ)は喰えそうにない。ガラッと場面が一変して、本筋の流麗な平安絵巻の世界に…。少々のエロさには抵抗力を持っているものの、このグロテスクな描写には就いていけません、兜を脱ぎます。芥川受賞作の「鯨神」からの5篇は、日を改めて読んでみたい。2021/11/10
yoshida
83
装丁に惹かれ購入。想像以上に濃い内容だった。少し谷崎潤一郎を想起する。表題作や「鯨神」、「花魁小桜の足」辺りが好み。中盤以降は途中で飛ばし読みした作品もある。濃い描写で読者は選ぶだろう。フェティシズムが過ぎて、引いてしまった作品もある。作品の不穏さに引き込まれる要素はある。ここ数年で読んだ作品でも、指折りの濃さがある。繰り返し読むかは別としても、印象には残る。個人的には他作を読もうとは思わず。2023/04/18