出版社内容情報
なぜ、この事故は起きたのか──。2005年4月、JR福知山線で快速電車が脱線。107人が死亡し、562人が重軽傷を負った。妻と妹を亡くし、娘が重傷を負った、淺野弥三一。豊富な経験を持つ都市計画コンサルタントだった。淺野は、JR西日本の企業風土と効率最優先の経営に原因があると考え、加害者側の新社長らと共に、巨大組織を変えるための闘いを始める。講談社 本田靖春ノンフィクション賞受賞作。
内容説明
なぜ、この事故は起きたのか―。2005年4月、JR福知山線で快速電車が脱線。107人が死亡し、562人が重軽傷を負った。妻と妹を亡くし、娘が重傷を負った、淺野弥三一。豊富な経験を持つ都市計画コンサルタントだった。淺野は、JR西日本の企業風土と効率最優先の経営に原因があると考え、加害者側の新社長らと共に、巨大組織を変えるための闘いを始める。講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
80
この事件が起きたときのことはよく覚えています。鉄道事故は、いつ、我が身に降りかかってくるか他人事ではありません。加害者としての企業の対応は憤りを感じるものですが、企業側の論理があることも仕方ないことだと思います。この事件も3.11の原子力発電所の事故も、企業が真摯に現状を受け止めているとは感じられません。この事件では、現場に全て被せているような体質は、情けなく感じます。ぎっしりと内容の詰まったノンフィクション。ちょっと息苦しいくらい重い。2023/04/30
hatayan
51
2005年に起きた福知山線脱線事故で、妻と妹を亡くした都市計画コンサルタントの淺野弥三一氏がJR西日本に徹底した対話を訴えた記録。技師出身の山崎正夫氏が社長に登用され、自分の言葉で事故に向き合おうとする姿勢に淺野は共鳴、組織の変革に向けた歯車が回り始めます。JR西の天皇と呼ばれた井手正敬氏にもインタビュー。大所高所の視線に立ち組織を牽引した功績を評価しながらも、事故は運転士個人の責任とする言葉に著者は「国鉄の幻影と戦っている」と距離を置きます。わかりやすさを排して複数の視点から事故を考えさせる良作です。2021/04/23
M
45
この事故で亡くなった方はもちろん、命は助かっても重症を負ったり心の病と闘い続けている方がいて、その遺族や家族や周りの人生をも変えた凄惨な事故。遺族であり、辛苦や病気を抱えながら、被害者の会を取りまとめてJR西という巨大組織と真っ向から闘い続けて地道に成果を上げていく淺野さんは本当にすごい方。毎日大勢の命を預かっているのに、安全面軽視で儲け主義、社内政治ばかりのJR西が起こすべくして起きた事故。言い逃れと責任転嫁のお上にはうんざりした。確率の問題ではなく家族にとっては1/1であるという言葉が心に残った。2022/07/01
雲をみるひと
36
福知山線脱線事故に巻き込まれた方の遺族と加害者であるJR西日本のやり取り、関係がテーマのルポ。被害者側の活動の中心だった方がJR側の態度や体質を変えていくメインストーリーを幹にJRの人事や他の被害者家族のエピソードを適宜挿入する形式で構成されている。かなりの長編ということもあり丁寧かつ詳細。なかなか読み応えのある作品。2021/07/26
たまご
27
事故の映像が飛び込んできた時の衝撃をとてもよく覚えています。ニュースでその後APS導入の遅れや日勤教育など、ビックリしたことが報じられ、そして段々口にのぼらなくなる。その裏に遺族とJR西との安全に対するこんな戦いがあったとは。事故が重大なだけに、感情を置いてでも原因究明ひいては次の「福知山」を起こさせない、次の遺族を生み出したくない気持ちが、批判ととらえて守整に入る組織と噛み合わない。そんな中で粘り強く交渉の場を持ち続ける淺野氏に頭が下がります。リスクを抱える業務に携わる人必読と思います。2021/06/05