内容説明
16歳で両親が事故死し孤児となったりつ子は、絶縁状態だった父の生家・財閥の玉垣家に引き取られる。贅沢な生活を送りながらも常に“よそ者”でしかない孤独感を紛らわすかのように勉強に励み、東大に合格。卒業後は名家の御曹司と結婚し、双子を出産する。すべてを手に入れたりつ子が次に欲したのは、子どもたちの成功だった―。永遠にわかりあえない母娘を克明に描き出す圧巻の長編!
著者等紹介
山口恵以子[ヤマグチエイコ]
1958(昭和33)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。会社勤めのかたわらドラマ脚本のプロット作成を手掛ける。2007(平成19)年、『邪剣始末』で作家デビュー。’13年『月下上海』で松本清張賞を受賞。当時、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤めながら執筆したことから「食堂のおばちゃんが受賞」と話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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machi☺︎︎゛
97
16歳で孤児となったりつ子の生涯の話。恵まれた容姿と東大にも合格できる頭を持っているのに使い方を間違い自分の娘との間に一生埋められない溝を作ってしまったりつ子。生まれながらにして過酷な運命を背負ってしまったりつ子の娘,星良。星良が幼い頃にりつ子から受けた扱いを考えればその後の星良の行動も理解は出来るけど、りつ子にももうワンチャンスあげてほしかった。いや、こういう人はどれだけのチャンスを貰っても無理かな😓2024/01/08
アッシュ姉
85
『食堂のおばちゃん』からの著者二冊目。テイストの違いに驚くも、読みやすさは変わらず。家柄、学歴、職業、選民意識と上昇思考に凝り固まった毒母。高いプライドに僻み根性と不屈の精神が尋常じゃない。傍から見れば充分幸せなのに次から次へと高みを目指す貪欲さが凄すぎる。バイタリティー溢れまくりの鬼母で家族は大変だ。子供の良いところを伸ばすのではなく、自分の理想を押し付ける。本人は子供のために良かれと思っているので憎みきれない。もともと相性が合わない母娘で考え方はどこまでも平行線。ラストは痛快!面白かった。2021/01/22
もぐたん
75
こちらの常識はあちらの非常識。どうしてもわかりあえない人は存在する。それが母親だったときの地獄。選ばれた血筋、富と名声そして「上質な」教育。読めば読むほど馬鹿馬鹿しくて、どこか醒めた目で見ていたけれど、リアルに共感できる人もいるかもしれない。毒母のキャラが突き抜けていて、滑稽ですらあった。どこまでも他人の人生に干渉したい母から、スルリと身をかわした娘の未来に幸多かれと願う。★★★☆☆2021/12/18
JKD
61
両親を事故で亡くし16才で孤独になったりつ子の残された拠り所は学歴というステータス。やがて名家に嫁ぎ双子を出産。学歴こそが全てとお受験から進学塾と躍起になるが、娘の星良だけは思うようにいかない。良かれと思うことが全て裏目に。娘にとってこの抑圧と過干渉はただの迷惑でしかなく、拒絶すら許されなくなった頃は憎悪だけが蓄積されていた。後半は成長して有名人になった星良の反撃が始まるが、母も負けじと毒を吐き続ける。歪んだ愛情をこれでもかと注ぎ込む暴走母はだれにも止められない。水と油とはまさにこのことですね。2020/09/13
坂城 弥生
47
正直、どっちの気持ちもわからなかった。ずっと星良がかわいそうにも見えたけど、暴露本を出したことで気持ち悪さのほうが強くなった。自分の母親が生きてるうちにあんな本を出すことは裏切り以外の何物でもない。父親が浮気相手と結婚するために星良を捨てたのは事実だから余計になんか虚しい話だなぁと。2020/11/08