感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
110
高校の時、本書を読み、魅了された。貧しさゆえに這い上がろうとして、そして挫折してしまう…青春ゆえの野望と過信。自分の将来のために、関係を持った女性を犠牲にして上がろうとする…昭和の定番の話だが、筆力があり魅了されていた。
ちょこまーぶる
107
何だか読後は無性に腹が立っていた一冊でした。理由は、主要登場人物の人々が、あまりにも自己中心的で自分勝手な考えで行動していて、破綻する人間関係ももっともだなぁ~という感情で読み進めましたね。特に、主人公である法律学生賢一郎に関しては、学生が人生の勝利者となるという野心を持って生きるという事は否定しないが、あまりにも人格的に未発達で自分の行動を起こす時も自分ありきでしか考えず、自らに責任を持つという姿勢が全く感じられず、嫌悪感すらも持ってしまったのでした。古い本ではあるが、今の若者の姿を予見していたかも。2017/12/29
なる
66
蹉跌。日常生活で使ってみたい単語ナンバー1である。青春のつまずき、と言い換えればわかりやすいかもしれない。学生運動が盛んな時代を舞台に、法科大学生の勇躍と挫折の有様を描いている。現実に起きた事件を題材としているらしい。主人公は成績抜群、前途洋々だけれど精神性は未成熟で自分勝手な利己主義、という現代でもよくいるタイプで基本的には共感しにくい、苛つく人物像ではあるのに読み手である自分にもその一端はあるのだろう、たまに頷いてしまうのが悲しいやら。しかし何より一筋縄では行かない結末。まんまとやられた。2021/06/30
かんらんしゃ🎡
60
舞台となった70年当時、私は軟弱な心情左派だった。いや、左派というほどの思想も理想もなくアンチ体制にかぶれているだけだった。主人公は体制の中で登りつめる事を考え、結婚相手さえその手段とする。彼の思考は利己的で詭弁的で文体も理屈っぽい。当時私は、一種のテクニック書のようにして読んだ。何かにつけ議論を吹っかけてくるメンドーな奴が多い時代に、自己弁護に徹し難しい言葉を使っていかにも正論を吐いているような理論武装は我々に必須であったのだ。彼のように。2018/11/17
hatayan
57
1968年刊。今も新潮文庫で入手できる芥川賞作家・石川達三の代表作。 法曹を目指す江藤青年が打算と性欲の間で揺れ動き、足蹴にした登美子から痛烈な復讐を受け破滅するというあらすじ。 江藤が司法試験に合格したとしても、それは法律について深い知識があることが認められただけ。法律以外のことは、凡庸な青二才。人格的、道徳的な方面ではまことに未発達なひとりのエゴイストにすぎませんでした。 学生時代以来久しぶりに読み返してみて、頭でっかちで理屈が先行してしまうことの危うさと幼さを、江藤青年と過去の自分に重ねました。2019/04/20