出版社内容情報
サチは美しく利発な少女だった。だが彼女は誘拐され、何年も男に監禁された。教育を、青春を奪われ、子を産まされ……けれどようやく事件は発覚し、生還を果たす。しかしそれは新たな苦痛の始まりだった。旧弊な価値観のまま変化のない住人による嫌がらせや無理解に疲弊する彼女の元へこの骨が本物のサチだと白骨死体が送りつけられるーー。重なる悪意の根幹に何があるのか。衝撃のミステリ。
【目次】
内容説明
サチは美しく利発な少女だった。だが彼女は誘拐され、何年も男に監禁された。教育を、青春を奪われ、子を産まされ…けれどようやく事件は発覚し、生還を果たす。しかしそれは新たな苦痛の始まりだった。旧弊な価値観のまま変化のない住人による嫌がらせや無理解に疲弊する彼女の元へこの骨が本物のサチだと白骨死体が送りつけられる―。重なる悪意の根幹に何があるのか。衝撃のミステリ。
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
1972(昭和47)年、新潟県生れ。2012(平成24)年『ホーンテッド・キャンパス』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞し、デビュー。同年、『赤と白』で小説すばる新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
144
いつもほどのグロさは無いのに、いつもに増して嫌悪感が半端なく喉が、心が締め付けられていた。声にならない苦しさでまさしく悲鳴をあげる読書だった。時代だから、閉鎖的な田舎だから・・そんなの何の免罪符にもならない。「サチの11年間を返せ」握りしめた拳が震えて、行き場のない怒りをどうしてくれよう。エピローグで都会の雑踏の中を行くサチと香子のシーンに涙が出た。どうか、小説の中だけの話でありますように。誰かの悲鳴を聴き取れる社会でありますようにと願わずにいられない。櫛木理宇にこれからも付いて行くと誓った日になった。2025/09/19
ちょろこ
129
苦しい、怖い一冊。小さな町で1983年に起きた少女誘拐監禁事件をベースに、恐怖、偏見、絶望、諦念、歪みをこれでもかというぐらいに浮き彫りにしていく苦しみのミステリ。普通に大人になると信じていた少女の突然奪われた人生。ただでさえ反吐が出るのに、その後の彼女を取り巻く絶望的な環境には憤りと苦しさでいっぱい。この町が育む幾つもの当たり前、差別を諦めとして心に飼い慣らす誰もの姿が悲しく怖くもあった。決して絵空事ではない、世の中至るところに埋もれているであろう悲鳴。それに気づき受け止めてくれる場、人の大切さを思う。2025/09/25
まさきち
92
ある田舎町で美貌の小学生の女子が拐われ、11年間監禁された後に帰還を果たす。そこに潜む闇とその後の世間と本人との摩擦を描いていくと思いきや、中盤以降は彼女の家に届いた人骨入りの箱と手紙によって、もう一つの事件と古き因習に縛られた土地の深いところで生き続ける闇が白日に晒される。思ってもいなかった結末でしたが、非常に楽しめた一冊でした。2025/10/21
新田新一
92
主人公のサチは11歳の時に誘拐され、監禁されて犯人の子供を出産します。犯人宅から救出され、家に帰ることができたのですが周りの人々からは白い目で見られることに。やがて、自宅に白骨が届き、お前は偽者だ、この白骨こそがサチだというメッセージが添えられていました。出だしの部分が巧みで引き込まれて、一気に読みました。グロテスクな描写が多く、読んでいると胸が悪くなります。サチの事件以上に悲惨な事件が浮かび上がってきて、非常に後味が悪いです。田舎の閉鎖的な社会を正面から描いて、日本社会の病根を剔出しています。傑作。2025/09/15
タイ子
92
読んでる間ずっと悲鳴が聞こえてきそうだった。片田舎の閉鎖的な村で利発な美少女・サチが突然行方不明になる。あろうことか彼女はある男の手によってさらわれ11年間蔵の中に閉じ込められ子供まで産む羽目になる。目を覆いたくなるような描写が続き、ある事がきっかけでサチは解放され村に帰る。が、そこから彼女のいや物語の大半が始まる。村人からの目線、噂が彼女の精神を追い詰めていく。そして彼女の家に届く白骨入りの謎の箱。本当のサチだという手紙。真相が判明するまでの人間のおぞましさをまざまざと知る。サチに香子がいて良かった。2025/09/10




