出版社内容情報
闇の中に美を育む日本文化の深みと、名文を成すための秘密を明かす日本語術。文豪の精神の核心に触れる二大随筆を一冊に集成。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。『陰翳礼讃』蒔絵、金襴の袈裟、厠……。巨大な庇下に広がる闇に、独自の美を育んだ日本文化の豊穣。/『文章読本』文章に実用的と芸術的の区別はない……古典と当代の名文家たちの一字一句に学び、含蓄ある日本語を書く心得を説く。文豪の美意識と創作術の核心を余さず綴る、名随筆を集成。
谷崎 潤一郎[タニザキ ジュンイチロウ]
内容説明
文豪の美意識と創作術の核心を余さず綴る、名随筆を集成。
目次
陰翳礼讃
厠のいろいろ
文房具漫談
岡本にて
文章読本
著者等紹介
谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
1886‐1965。東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。’49(昭和24)年、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mukimi
126
高校生の頃に課題で読んだことがあるがあの頃は全く理解できなかった。30歳を過ぎて、陰翳礼讃の世界観が理解できるようになっていた。薄暗い中にある輪郭の曖昧なものの美しさを尊ぶ日本人の美的感受性を知ることができるようになっていた。歳を重ねるのも悪くない。日本は諸外国に対抗せずとも、この美しい独自の文化をもっと誇っていいと思えた。そしてもう嬉しくて背中がぞわぞわするくらい最高に贅沢な詩的表現の連なり…想像力を掻き立てる芳醇な谷崎文学の世界で遊ばせてもらった。9月の雨夜にぴったりの読書。2021/09/13
扉のこちら側
97
2016年901冊め。谷崎の二大名エッセイがこの文庫により1冊で読めるようになった。物体と物体の間の影に日本的な美を見出すことには頷ける。私が日本の美を考える時に出てくるのは、「陰影」に加えて「湿り気」と言うものがある。怪談話にも通じるものなのだが、ひたり、ひたりという足音だとか、ぴちょん、ぴちょんという水音だとか、肌の表面が汗で仄かに光る様子だとか、そういう艶やか…という一言では表せない雰囲気。「文章読本」は、全てには頷けないがやはり文豪が言うだけに説得力がある。トイレ談義も面白かった。2016/10/27
さと
95
谷崎氏が感じる日本の美 について、独自の感性とこだわりが綴られているが日本の歴史や文化、生活に根拠を置くだけに、私への戒めとも。厠の話がとても良かった。幼いころ訪れた祖父母の家のトイレはまさに厠といった趣だった。子供ながらに『うちの中で一番風情があるところ』と感じ、当時は自分の感覚を疑ったが、訳も分からぬ子供でさえ感じられた風情があったのだから、相当な厠?だったのだろう。夏は蚊帳をつり月の明りの中で眠った。家の隅々や廊下は暗かった。今にして思えば、だからこそ染みついた日本人としての感覚があるのかもしれない2017/01/03
優希
92
谷崎の2大エッセイが1冊にまとまったものになります。独自の視点で論じる日本の美、名文から日本語を論じる文章の美には、美意識が強く表れているような気がしました。美術と芸術と創作の真髄が余すところなく述べられていると思います。2018/04/09
Kajitt22
61
『陰翳礼讃』も良いが『文章読本』が素晴らしい。数十年ぶりにアカデミックな気分を味わえた。学生時代に古文・漢文は外国語の様で苦手だったが、これが教材だったらもっと古典に親しみが湧いたかもしれない。日本語の多様性、奥ゆかしさ等例文を挙げ丁寧に書き込んでいる。さすが大谷崎。たびたび引用される志賀直哉の『城崎にて』も読まねば。解説では筒井康隆先生が『文章読本』を語るとは、思いもよらず楽しい。2021/10/14
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