出版社内容情報
その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした――。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、末期癌を患う秋吉のクライアント、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながらも、ひと夏を過ごす。?で埋めつくされた日常の中で、願いのようにチカリと光る「本当」の物語。
内容説明
その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした―。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、そして末期癌を患う秋吉の仕事仲間、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながら、ひと夏を過ごす。嘘で埋めつくされた日常の中で願いのようにチカリと光る「本当」の物語。
著者等紹介
燃え殻[モエガラ]
1973(昭和48)年神奈川県横浜市生れ。2017(平成29)年、『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新田新一
27
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の続演。主人公の秋吉はテレビの仕事をしながら、都会の中で根無し草のような生活を続けています。知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香と知り合うことで、不思議な縁に絡めとられていきます。前半は前作と同じパターンでつまらないと思ったのですが、後半になるとぐっと面白くなりました。末期癌に苦しむ仲間の大関や、母親から見放されている明菜の描き方に作者の深い優しさを感じます。彼らはひと夏を家族のように過ごすのですが、夏が終わるとその絆は消えてしまいます。結末の寂寥感が胸に染みました。2024/09/25
りんだりん
21
なんて温かくて切ない物語なんだろう。テレビ制作会社に勤める秋吉にも、風俗嬢の優香にも、中森明菜から名前をもらった10歳の明菜にも、末期がんを患う秋吉の仲間の大関にも会いたくなる。なんでそんなに不器用なんだよ、と聞きたい。でも、ありがとうと伝えたい。そんな気持ちになる小説。★32025/03/17
Kanonlicht
20
著者にとって『ボクたちは~』以来の小説2作目。前作同様、テレビ業界で働く中年男の、さわやかとは言い難い、どこか気だるげな青春を描いている。ひと夏の出会いと別れ。急速に縮まった心の距離は、大事なことを見落としたまま、始まったときと同じように突然終わりを迎える。誰もが似た経験を持つ青春の苦い思い出を、こんなに切なく再現できるのは、著者のひとつの才能だと思う。エッセイも面白いけれど、ぜひ小説ももっと書いてほしい。2024/09/10
しーふぉ
19
最近エッセイを読む作家さんの小説を初読み。エッセイに近しいものがありました。主人公は自身を反映している。村上春樹の影響あるのか、喪失の物語でした。一夏の物語でした。2025/07/21
カリスマ
10
夏なので読みました。40歳過ぎの秋吉に起こった、夏の数日間。仕事仲間の大関、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、同じ階のアパートに住む10歳の明菜。それぞれの登場人物の人生の一瞬がある一夏において交錯する。その数日間に夏のすべてが凝縮されていて、その儚さがとても夏だった。温かくて不器用で人間らしい登場人物がみんな、その後幸せに過ごしているといいな。「私さ、人生って何度でもやり直せるとは思ってないけど、何度かはやり直せそうな気がしてるんだ」「後ろ姿で見えないが、僕はこのとき間違いなく笑っていたはずだ。」2025/08/24
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