出版社内容情報
珍談奇談・人間模様を巧みな構成と語り口でつづる、西鶴の傑作短編集。
好色物で人気を得た西鶴は、一躍京都・大阪・江戸三都を席巻する流行作家です。ここに収録したのは、その脂ののった時期の短編集で、三作合わせて九五話。 西鶴の鋭い人間観察と豊かな表現は、それぞれの登場人物を躍動させています。とりわけ自己主張する女性は、倫理的には否定されるにもかかわらず、今に思えば魅力的ともいえます。家来との仲を糾弾され自害を迫られても、恋は不義にあらず、死ぬ理由がない、とつっぱねる武家の姫。早死にした姉たちを弔えという勧めにも知らん顔、尼になるくらいなら、と家出してしまう末娘。――彼女たちの自我に喝采を送るのも、読み手に許された自由です。 「男色」と聞くと、一瞬ひるみますけれども、近世も初めの頃は、アブノーマルでも何でもなく、女色・男色どちらも当然、という健全な(?)時代であることを念頭におけば、ラブ・ストーリーとして読めなくもありません。アブナイ陰の世界でなく、貞節・嫉妬・三角関係・心中といった定番のテーマが堂々とくりひろげられます。 まあ、週刊誌でも読むつもりで本を開いてください。狐狸・天狗から人形まで登場する怪異譚、レイプあり乱交ありの女色男色、殺人・心中・敵討ち、ジャーナリズムにのった西鶴の、旺盛なサービス精神は読む者を飽きさせません。
宗政 五十緒[ムネマサ イソオ]
著・文・その他
松田 修[マツダ オサム]
著・文・その他
暉峻 康隆[テルオカ ヤスタカ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
恋愛爆弾
19
『男色大鑑』の端々から滲み出る深刻なミソジニーと身分差別の構造を受けとることは容易であり、それらから目を背けるわけにはいかない。だが、目を背けてはならないのではなく、あくまで私がやむにやまれぬ事情によって目を背けるわけにはいかないのだ。なぜそうまでして男色の優位性を説かねばならなかったのか、また、それを読む私の「心は闇となりぬ」るとき、なぜその優位性を私は最後には信じてしまうのか、これは私が私であるための読書である。2023/03/02
金吾
16
本朝二十不孝のみを読みました。非常に読みやすい話であると共に、現代においても参考になる話があり良かったです。「今の都も世は借物」が好みです。2022/08/12
ぽてと
0
真面目だったのに博打にハマる人や嫁・姑問題などの話もあり、現在と変わらない人間の姿も見える気がして楽しく読めた。2024/02/01