出版社内容情報
映画「秋刀魚の味」「出来ごころ」
「秋刀魚の味」(昭和37年)は、妻に先立たれた初老の父親(笠智衆)が、一人娘(岩下志麻)を嫁に出すまでを描き、「晩春」(本シリーズ第2巻収録)のリメイクとも評される作品です。しかしながら、本作が喜劇としても高い評価を受けているのは、本筋に盛り込まれた挿話の秀逸さにあります。
東野英治郎と杉村春子演じるうらぶれた父娘の会話や、笠、加藤大介、岸田今日子が軍艦マーチに合わせて笑顔で敬礼を交わすシーンは、おかしくてほろ苦い名場面です。小津円熟の手腕が光る遺作となりました。
「出来ごころ」(昭和8年)は、「喜八」という人情に厚い男が主人公の「喜八もの」シリーズ第一作。サイレント作品で、主演は戦前の小津作品常連の坂本武。
解説本は、岩下志麻、小栗康平監督の2大インタビュー、「秋刀魚の味」のロケ地である東急池上線石川台駅、川崎球場の当時と現在などを収録。
【編集担当からのおすすめ情報】
小栗康平監督に取材したのは、3.11の東日本大震災から12日目。
「大震災が私たちに突きつけたのは、目の前にあるものが一瞬にして失われる恐怖。それを目撃したあとで小津さんの映画を観ると、小津さんは、奪われてはならない〈場〉というものを描いていると思えてなりません」
小栗監督が語った一言ひとことが心に染みました。示唆に富んだインタビューをぜひ読んで頂きたいです。
内容説明
娘を嫁に出すまでの父親の心模様と、その後に訪れる老いと孤独を、おかしみを込めて描きだす円熟の作品。松竹の看板女優・岩下志麻が主演を務め、東野英治郎、杉村春子らベテラン俳優陣が脇を固めた。小津は公開の1年後に亡くなり、本作が遺作となった。
目次
「秋刀魚の味」の目線
本巻の2作―あらすじ・解説
連載 現役映画人が語る小津映画の見どころ 第7回 小栗康平(映画監督)―奪われてはならない“場”
ロケ地探訪―石川台駅(東京都)、川崎球場(神奈川県)ほか
インタビュー 思い出の小津安二郎 第7回 岩下志麻(俳優)―小津先生の温かさと孤独
連載 「小津調」とは何か? 第7回 練られた脚本とその現場
連載 小津安二郎・断想 第7回 戦争について語らない男の話(内田樹)
出演者紹介 名優クローズアップ―岩下志麻
連載 フランスで愛されるOZU 第7回 最後の映画(フロドン,ジャン=ミシェル)
連載 小津安二郎物語 第7回 戦後の再スタート
感想・レビュー
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五月雨みどり