出版社内容情報
「広大なアラスカ北極圏で、ぼくは点になって待つしかない」 アラスカに魅せられ、20年にわたりその大自然と動物たち、その土地に生きる人々を撮り続けた写真家・星野道夫。不慮の事故による急逝後も、彼の写真と文章は見る人に変わらぬ感動を与え、新たなファンを増やし続けている。本書はアラスカの大自然の中で星野が多くの生命と出会い、残した数々の写真作品とエッセイの中から選りすぐり、写文集として再構成。写真と文章が相まって生まれる臨場感が、星野ワールドの魅力をさらに広げる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
400
カリブーに魅せられてアラスカに渡った星野道夫。本書は彼の生前に出版されたものではなく、遺稿を集めて編纂されたもの。あとがきで「あの男は幸せだった」と語る父の逸馬。たしかにそうであったかも知れない。この本には彼が愛したアラスカの動物たちが、大地が、そして短い夏を謳歌する可憐な植物たちが写し撮られている。ここにあるのは、ほんとうに貴重な写真群だ。そして、これを残したのはまさしく星野道夫であり、他の誰でもありえなかったのだ。ベスト・ショットは決め難いが、やはり彼の渾身の自信作「ブリザード中を進むカリブー」か。2018/09/26
SJW
169
動物ごとに写真とエッセイがまとめられていて、星野さんの活動と思い、それから極北の生態系を知ることができる。カリブーの大移動、グリズリーの親子、子を守るためにグリズリーを攻撃するムース、当初はなかったアラスカの花が特に印象深い。アラスカのグリズリーと度々遭遇したものの、襲われたことがなく、毎回難を逃れることができた。また星野さんご夫婦から直接聞いたのは、撮影旅行でテントに泊まっているとすぐ横にグリズリーがやって来たとのこと。熊との共生を望む星野さんはカムチャッカの熊とも共生したかったのだろうと思う。あとがき2017/10/31
優希
105
写真の数々から極北の生命の息吹が聞こえてくるようでした。カメラが捉えた動物や自然は確かにその生命をひたむきに懸命に生きているのがわかります。そして手記からはフィールドで何を思い、どのように自然界を眺めていたのかが伝わってきました。偉大な自然の中では人間など小さな存在でしかないのだと思わずにはいられません。2017/01/31
やま
75
星野道夫が、厳しくも美しいアラスカ北極圏を撮影した感動の写真集と文章の物語です。「カリブー(北アメリカ産のトナカイの呼び名)」アラスカ北極圏、コンガクット川上流の谷をゆくカリブーの大きな群れを見ながら毎年千キロの旅をするカリブーに想いを馳せます。それもいくつもの大きな川を渡り、著者の撮影用の三脚が飛ばされそうになるほどの強風が吹くブリザードのなかをひたすら歩くカリブーの2万とも10万ともいう大群を思いうかべます。この大群が毎年同じ道をたどるのでなく、どのようにして北に南にと移動して行くのかと。→2022/09/20
アッキ@道央民
61
星野さんがこれまでに出版した写真集やエッセイなどから編集された一冊。大自然アラスカへの愛情がたっぷり詰まったフォトエッセイ。写真がとにかく美しい。色彩感覚も勿論かもしれないけど、大自然の中で生きる動物園たちの伊吹が感じられるような感覚も覚える。大地の中を何日にも渡って歩き周り、カリブ-やグリズリ-、ム-ス(ヘラジカ)の貴重な瞬間を撮影したり、その執念にも驚かされる。星野さんの魂はもしかすると今もアラスカの地で行き続けているんじゃないかな。優しく語りかけてくれる大地の息吹きのような一冊ですね。2019/02/12