内容説明
侯爵鍋島家に生を受け、皇族梨本宮家に嫁ぎ、そして太平洋戦争後は平民となった伊都子妃。明治・大正・昭和の各時代を、七七年間にわたって綴った日記が、その波瀾の生涯を紡ぎ出す。近代日本の歩みを読み解く道標となる本、待望の文庫化。
目次
マント=ド=クール
日露戦争
世界の強国
喪服の宮妃
デモクラシーの風
戦火
警報
急転落
「象徴」の時代
著者等紹介
小田部雄次[オタベユウジ]
1952年生まれ。立教大学大学院文学研究科博士課程単位取得。日本近現代史専攻。現在、静岡福祉大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
11
娘である朝鮮王妃李方子への関心から読んでみた。日朝の友好のために書かれた方子の自伝とは異なり、伊都子の日記は日々折々77年間に書かれたものであり、飾らない生の声が綴られている。膨大な量のその日記を編者が他の史料との相違点などを指摘しながら戦後までを描いている。「この日は何々があったが伊都子は何も書いていない」という解説もありがたい。2020/06/28
駄目男
7
旧名は鍋島伊都子。父は肥前佐賀藩主鍋島直大侯爵。名前の伊都子は直大が駐伊特命全権公使だった関係でローマで生まれたことに由来する。後に梨本宮守正王と結婚して生まれた娘、方子(まさこ)が朝鮮王朝の李王世子と結婚した人と言えば分かるだろうか。因みに秩父宮妃勢津子様は伊都子の姪になる。しかし、この本には多くの貴重な写真が掲載され実に興味深い。大正天皇や幼少の頃の昭和天皇、今上陛下の誕生間もない写真。伊都子は明治大帝や大正天皇の崩御に関してもこと細かに記述していて、皇族が書いた日記としては稀なるものではなかろうか。2017/07/20
hiropon181
5
肥前佐賀藩主鍋島侯爵の姫君として生まれ、宮家に嫁入りして皇族となった宮妃の人生が、ご自身の日記という形でこれほど克明に残されていることに驚く。まさに日本の近現代史の貴重な史料。戦後に臣籍降下されるも、やはり皇族としてのプライドが垣間見える。2022/10/26
ゆの字
2
明治天皇の女官や、徳川慶喜の孫姫の手記と違って、伊都子さんの武家の娘、皇族妃としての矜持を強く感じた。お年を召してからの臣籍降下は、それまでの生活や価値観が土台から崩れるわけで、相当つらかっただろうなと思う。日記だけに、その当時のご本人の率直な言葉がそのまま綴られていて、「ワーイ、ザマーミロ」には苦笑してしまった。2020/11/17
Rina Niitsu
2
鍋島公爵のお姫様として育ち、明治、大正、昭和という激動の時代を生きてこられた方の貴重な日記を読めるとは恐れ多いですが、関心を持つ人間にとってはこの上もなく嬉しく興味をひかれます。皇室に対する思い、時折挿入されている写真から覗われるしぐさ、身分の高い方とはかくも違うのかと当たり前のことながら再認識しました。特に晩年に昭和天皇に拝謁された際の写真はお辞儀の美しさは言わずもがなですが、なぜか胸が熱くなりました。また、皇太子殿下(昭和当時)のご成婚時に詠まれた和歌には色々な意味でぞくっとしました。