出版社内容情報
〈本〉が〈物語〉が、私たちを呼んでいる
《新刊書店で、あるいは古本屋で、作者も作品名も聞いたことがないのに、興味を引かれる本に出合ったとする。その本は確実に私を呼んでいる。手にとってしまう。レジに持っていってしまう。帰りの電車のなかで読み出して、びっくり仰天する。著者もタイトルも知らなかったことが不思議に思えるほど、自分にぴったんこの本なのだ。》
ネットよりもリアル書店を愛する著者が、心に残る本の数々を紹介する見事な読書案内。
宮沢賢治・太宰治から開高健・池澤夏樹に始まり、佐野洋子・山田太一、そして江國香織・井上荒野まで、「思わず読みたくなる」名エッセイ50篇を収録。
【編集担当からのおすすめ情報】
思わず書店に走りたくなるような読書エッセーです。
目次
あなたのポケットの、あなただけの物語 9
1
冬の光 宮沢賢治の童話 15
なんて明るい小説なんだろう 太宰治『斜陽』 17
世界はひとつではない 松谷みよ子『モモちゃんとアカネちゃん』 20
もうひとつのガイドブック キューバでヘミングウェイを読む 23
旅と年齢 旅の本 28
本が私を呼んでいる 図書カード三万円使い放題! 34
2
食べることの壮絶 開高健『最後の晩餐』 43
問い続ける、書きつづける 開高健『戦場の博物誌 開高健短篇集』 50
開高健のこの三冊 『輝ける闇』『最後の晩餐』『一言半句の戦場』 59
小説は世界を超えることができるのか 池澤夏樹『光の指で触れよ』 61
池澤夏樹のこの三冊 『マリコ/マリキータ』『きみのためのバラ』『カデナ』 68
目的のあるふりなんかしない 田中小実昌『田中小実昌エッセイ・コレクション2 旅』 70
人はこんなにも奥深い 田辺聖子『蝶花嬉遊図』 74
「人」という迷宮 山田太一『冬の蜃気楼』 82
もんのすごくかわいい 佐野洋子『コッコロから』 88
3
意地の悪い本? 江國香織 絵・荒井良二『ぼくの小鳥ちゃん』 101
人と人がつくる「迷路」 江國香織『金米糖の降るところ』/山田太一『読んでいない絵本』 108
世界は自由で広い 川上弘美『天頂より少し下って』/岩瀬成子『だれにもいえない』 110
生きていくのに必要なもの よしもとばなな『どんぐり姉妹』 113
開放された彼女の庭 森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 116
私たちに寄り添う物語 森絵都『この女』/山田太一『空也上人がいた』 121
固定概念から解き放たれるとき 三浦しをん『木暮荘物語』/佐野洋子『そうはいかない』 123
言葉の海を渡る舟 三浦しをん『舟を編む』/夏石鈴子『新解さんの読み方』 125
どんどんねじくれる場所 井上荒野『もう切るわ』 127
それもまた愛だった 井上荒野『ズームーデイズ』 133
人と関わることの頑丈さともろさ 井上荒野『つやのよる』 140
愛や理想や希望というもの 桐野夏生『ポリティコン』ほか 142
子どもの時間と大人の世界 湯本香樹実『春のオルガン』 144
恋のようなものと、ほんものの恋 佐藤多佳子『黄色い目の魚』 152
母という存在が持つ孤独 金原ひとみ『マザーズ』/西原理恵子『毎日かあさん8』 159
大人のための秘密基地 大島真寿美『水の繭』 161
胸の震えるような音楽が聴こえる 大島真寿美『ピエタ』ほか 167
居心地のいい場所 藤野千夜『主婦と恋愛』 169
4
一九八〇年代の青春 吉田修一『横道世之介』/都築響一『バブルの肖像』 179
騙される側の爽快な復讐物語 吉田修一『平成猿蟹合戦図』/長友啓典『死なない練習』 181
「今」と地続きの戦後史 橋本治『リア家の人々』/星野智幸『俺俺』 183
私に向かって投げられたボール 伊集院静『ぼくのボールが君に届けば』 185
時代に汚されぬ美しさ 伊集院静『志賀越みち』 192
「私」になるための決意 沢木耕太郎『あなたがいる場所』 194
この世界に対するぎりぎりの希望 三羽省吾『厭世フレーバー』 200
まっとうに生きるとはどういうことなのか ヒキタ クニオ『角』 209
5
忌野中毒 忌野清志郎『忌野旅日記』 219
安心しろ。君はまだ大丈夫だ。 忌野清志郎『瀕死の双六問屋』 225
私たちの知らない世界 大竹伸朗『カスバの男モロッコ旅日記』 230
がんばれ、どうってことないから 高野秀行『アジア新聞屋台村』 237
ああ、食べたい 東海林さだお『ホットドッグの丸かじり』 244
わけのわからない人間が多すぎる 北尾トロ『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』 250
想像をはるかに超えた暗い場所 河合香織『帰りたくない──少女沖縄連れ去り事件』 257
彼女が指さす先 星野博美『のりたまと煙突』 264
ああなんて、楽なのだろう 酒井順子『29歳と30歳のあいだには』 270
もうひとつの小説との接し方 酒井順子『金閣寺の燃やし方』ほか 276
ひとをゆたかにする場所 岡崎武志『古本生活読本』 278
角田 光代[カクタ ミツヨ]
内容説明
ネット書店よりもリアル書店(とりわけ町の書店)を愛する著者が、心に残る本の数々を紹介する見事な読書案内。宮沢賢治、太宰治、ヘミングウェイに始まり、開高健、池澤夏樹、佐野洋子、山田太一から江國香織、井上荒野、三浦しをん、森絵都まで、小説からエッセイ、ノンフィクションまで―既読の本なら、もう一度読み返したくなり、未読の本なら、思わず書店に走りたくなる。読書という幸福な時間をたっぷりつめこんだ極上のエッセイ五十余篇を収録。
目次
1(冬の光―宮沢賢治の童話;なんて明るい小説なんだろう―太宰治『斜陽』 ほか)
2(食べることの壮絶―開高健『最後の晩餐』;問い続ける、書きつづける―開高健『戦場の博物誌開高健短篇集』 ほか)
3(意地の悪い本?―江國香織『ぼくの小鳥ちゃん』;人と人がつくる「迷路」―江國香織『金米糖の降るところ』/山田太一『読んでいない絵本』 ほか)
4(一九八〇年代の青春―吉田修一『横道世之介』/都築響一『バブルの肖像』;騙される側の爽快な復讐物語―吉田修一『平成猿蟹合戦図』/長友啓典『死なない練習』 ほか)
5(忌野中毒―忌野清志郎『忌野旅日記』;安心しろ。君はまだ大丈夫だ。―忌野清志郎『瀕死の双六問屋』 ほか)
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞してデビュー。主な小説作品に『空中庭園』(婦人公論文芸賞)、『対岸の彼女』(直木賞)、「ロック母」(川端康成文学賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)、『ツリーハウス』(伊藤整文学賞)、『紙の月』(柴田錬三郎賞)、『かなたの子』(泉鏡花文学賞)、『私のなかの彼女』(河合隼雄物語賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。