出版社内容情報
言葉の迷宮と異境を体感する超感覚ミステリ
だめだ。ダサい。この文体は美学的に許せない――。
小説家の伊豆浜亮平は文体や言葉づかいに独自のこだわりを持っている。ただ、この5年間はヒット作にめぐまれず新作刊行の見通しも微妙で、3年前から始めた女性誌のライター業でなんとか食いつないでいた。世界的な天才ピアニスト荻須晶へのインタビュー取材をきっかけに、そんな小説家が出会ったのは、独特の話法で言葉を操る不思議な女だった。
初めて遭遇した場所は、軽井沢にある荻須晶の別荘近く。純白のワンピース姿で森の中を一人でさまよう彼女は、薄い唇を開いて確かにこう言った。
「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」
社宅にヒく? 引く? 牽く? だめだ、まるで意味がわからない――。
彼女の話す言葉にどんな意味があるのか、そもそも彼女はどうしてそんな話法を駆使しているのか。混乱する小説家をよそに、彼女の言葉はつづく。
「私はその中心を走っていたところです。将来、社宅で打ち合わせしますね」
言葉の迷宮をさまよう小説家は、やがて執筆中の小説の内容にも通底した“もうひとつの世界”に導かれてゆく。――著者真骨頂! 異境を体感する超感覚ミステリ長編!
【編集担当からのおすすめ情報】
SF、ミステリ、ファンタジー、恋愛小説などから、そういった既存のジャンルに割りふれない作品まで、著者の平山瑞穂さんは変幻自在に新作を発表しつづけていますが、おそらく本作は、主人公を小説家としたことで、平山さんの“素”の部分が最も作中に昇華されている、といえる作品です。主人公の伊豆浜亮平について、平山さんはインタビューでこう語っています。
「もし僕が結婚もしないでこの年まできたら、きっとこんな暮らしぶりなんだろうなあというのが伊豆浜なんです。その姿を書いたという意味で、もう一人の自分がいるパラレルワールドですね」
たくらみに満ちた意欲作です。平山瑞穂作品に親しい方はもちろん、そうでない方にも肌で感じとっていただきたい、きわめて小説的な体験がこの作品には潜んでいます。
内容説明
小説家の伊豆浜亮平はヒット作にめぐまれず、フリーライターとして雑誌に記事を書いて生計を立てている。ただ、文章や言葉づかいに関しては人一倍鋭い感性を持っていた。そんな小説家が、世界的ピアニストへの取材をきっかけに遭遇したのは、不思議な話法で言葉を操る謎の女性だった。「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」―彼女の言葉にどんな意味があるのか、なぜこんな話し方をするのか。言葉の迷宮をさまよう小説家は、やがて執筆中の作品にも通底した“もうひとつの現実”へと導かれてゆく。物語の異境を体感する超感覚小説。
著者等紹介
平山瑞穂[ヒラヤマミズホ]
1968年東京都生まれ。2004年『ラス・マンチャス通信』で第十六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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