小学館文庫
仮面の商人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 253p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784094060348
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

フランスの巨匠が出版界を描く驚くべき傑作

この長篇小説は三部構成になっている。
まず第一部は、作家志望の若いヴァランタン・サラゴスの視点で描かれる。まるでバルザックを思わせる、社交界とマスコミ(出版社・新聞社)、そして有名無名の作家、批評家たちがうごめくパリの人間模様が活写される。もちろん上流夫人との恋愛もたっぷり。
驚くべきことに、読者の予想を裏切って、第一部は主人公の自殺で幕を下ろす。
そして第二部。無名の作家サラゴスは、皮肉なことに死後有名なベストセラー作家になっている。語り手は、サラゴスの甥のアドリアンである。彼はサラゴスの評伝の執筆にとりかかっている。生前の叔父を知る人々を訪ね歩く(読者は第一部の登場人物たちが語る「嘘」あるいは「記憶の改変」に愕然とする)。この第二部は、20世紀の新しい文学(モダニズムとミステリ)の手法で描かれる。そして、短いが鮮烈な第三部がくる。
純文学というよりはエンタテインメントというべき長篇小説である。
見事なストーリーを小笠原豊樹の名訳で楽しめる最高の贈り物。

内容説明

巨匠が描く三部構成の物語。第一部は、新人作家ヴァランタンの視点で描かれる。社交界とマスコミ、そして有名無名の作家、批評家たちがうごめくパリの人間模様…もちろん上流夫人との恋愛も。しかし、十九世紀小説のような物語は、読者の予想を裏切る展開でいきなる幕を下ろす。そしてミステリの手法を取り入れた斬新な第二部が始まる。無名の作家は皮肉にも死後人気作家になっている。語り手は、甥のアドリアン。彼は叔父の評伝を書くために第一部の登場人物たちを訪ね歩き、天才作家の虚と実の間を揺れ動く。そして最後に、鮮烈な第三部が待ち受けている。

著者等紹介

トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ] [Troyat,Henri]
フランス屈指のベストセラー作家。1911年モスクワ生まれ。20年にロシア革命を避けて一家でフランスに亡命。38年、『蜘蛛』でゴンクール賞を受賞(対抗馬はサルトルの『嘔吐』)。2007年逝去

小笠原豊樹[オガサワラトヨキ]
1932年生まれ。翻訳家として露仏英の三ヶ国語を自在に操る。岩田宏の筆名で詩、小説、評論も多数。2013年『マヤコフスキー事件』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

40
「語り」と「騙り」の妙を味わえる逸品。スタンダールの『赤と黒』や大デュマを薄口にしたような第一部のラストは衝撃的。第二部は、作家が嫌っていた兄の息子が関係者に取材して作家の人生を再構築しようとする話。既に第一部を読むことで真相を知った読者(神視点)にとっては「違うんやー!」と叫んでしまう。だからこそ、それらを踏まえた上での第三部には予感はしていてもやはり、呆然としてしまいます。こういうことって伝記だけじゃなくて、日常生活でも結構、よく、起こっているんですよね・・・。卑近だからこその歪さを突き付ける作品。2014/12/02

星落秋風五丈原

18
アドリアンは叔父サラゴスを知る人々にインタビューを試みるが、神視点で―つまり第一部を読んでいた読者だけに分かる齟齬が生じる。知人・恋人が語るサラゴスと、サラゴス本人が彼等に対して感じていたことや彼の本当の気持ちとの違いがかなり大きい。アドリアンが書くサラゴスは現実とはかけ離れた姿になってしまうのは必至だ。そこに最後の爆弾が落ちて来る。さてアドリアンが行った決断と結果は本書を読んで確かめて欲しいが、伝記作家として名が知れているトロワイヤが、フィクションとはいえこの結末を書いたことにはもう一つの意味がある。2014/12/31

H2A

15
伝記作家として有名なトロワイヤが、このような題材で軽妙に小説を書いたのが痛快。良い意味で裏切られる。そして私があちこちで読んできた小笠原豊樹が、実は一人の人物だったことを知ったのもかなり最近。ほぼ最後の仕事になったのがトロワイヤの翻訳だったのだ。2015/04/29

アトレーユ

14
三部構成がお見事。1部。生前はパッとせず、地味な作家が、死後にきっかけを掴み大作家に。2部。偉大な作家になったサラゴスの人生でほんのちょっと交錯した周囲の人たちの虚栄心。ってな具合に、視点と時空をきっちりくぎっているので、読んでいると「そうじゃないんだってば!!」と主人公に感情移入しやすい。2016/10/28

みけ

12
伝記小説も書く著者の「伝記小説とはこんなにあてにならないのだよ」という、ちょっと自虐的な小説。第1章では、売れない作家の半生。第2章では、作家の甥が、伝記を書くため知り合いの話を聞いてまわる。そして第3章では…。インタビューに答える人々はきっと、嘘をついてる意識は低いんだろうと思う。記憶の改ざんや、理想の過去を語っている。伝記小説家自身も、自分の中の像に当てはまる様に解釈し、情報を取捨選択してしまう。まさに死人に口無し。滑稽で少し、ほろ苦い。2019/03/09

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