出版社内容情報
涙あふれて優しくなれる、感動のお江戸話。
江戸時代、老中水野忠邦による天保の改革?特に「奢侈禁止令」によって、江戸の街は灯が消えたよう。蒔絵師・孝太の許にも仕事がこない。そんな時、幼なじみ作次からの仕事を受けたが、彼には悪い仲間が……。禁令を破った主人公の友情と夫婦愛を描いた表題作「しずり雪」は、茨城県「長塚節文学賞」の短編小説部門で大賞を受賞した佳品。他に同時代を描いた「寒月冴える」「昇り龍」「城沼の風」を収録。市井もの、武家ものとあるが、いずれも、叙情性豊かな、心にしみる感動小説集。ちなみに「しずり雪」とは、樹木などに積もった雪が、太陽の光を浴びて、滑り落ちる様子をいう。 才能溢れる若手女性作家の意欲作に、乞う、ご期待!!
内容説明
老中水野忠邦の“奢侈禁止令”で、江戸の街は灯が消えたよう。蒔絵師・孝太は禁令を破って、幼なじみの仕事を受けたが…。江戸の庶民の哀感を、心を込めて描く意欲作!!茨城県・長塚節文学賞小説部門大賞受賞。他に市井もの二編、武家もの一編を収録。知らずのうちに涙こぼれる逸品ぞろい。
著者等紹介
安住洋子[アズミヨウコ]
1958年兵庫県尼崎市に生まれる。3歳で父親の転勤に伴い大阪府枚方市に転居。大阪信愛女学院高等学校から同短期大学に進み、卒業後、学習塾で国語科教材作成に携わる。1999年第3回長塚節文学賞短編小説部門大賞受賞。現在、サンフランシスコ在住
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
75
安住洋子さん初読み。本当にこれはデビュー作なのでしょうか?個人的な好みで言えば山本周五郎賞クラスの大金星。連作短編集の内「越沼の風」が絶品でしたが感想は順に。「しずり雪」(木の枝や軒先から雪が落ちるさま。少しずつ枝から雪が落ちる風情。漢字では垂り雪)第三回長塚節文学賞・短篇小説部門大賞受賞作は僅か35ページ。言葉にし難い大切なものを失った主人公。その複雑な遣り切れなさ・哀しみをセリフでは無く、エピローグの自然描写「しずり雪」に全て重ねて‐哀しみは雪のように‐短篇ながら作品の深みを増すタイトルが秀逸。→続く2012/06/26
ぶんこ
43
初読み作家さん。 良かったです。 全編に登場する友五郎親分が登場するまではハラハラドキドキしっ放しですが、出てくると途端に安心なのです。 これで心配事が解決し、無事息災な日々になると。 祐真さんが怪しいのは本当かと心配が長く続いた時は、この物語では親分は出てこないのか? それくらい私にとっては重要人物になってました。 毎日、何事も無く穏やかに暮らせる幸せを痛感しました。2015/03/14
takayo@灯せ松明の火
27
江戸という舞台で、人間の素直な心根と真っ当な真面目さを描く。特に後半の2編が好き。【昇り龍】父と生活の為に身体を売る。想う人を諦めたつもりが、想い人の縁談に心乱れ、逆に別れるつもりの夫の弱さを前に一緒に行くと頷いてしまう。女だもの仕方がないさ。【城沼の風】無念な父の最期。諦観したつもりが、自分の内にある凶暴さに震える祐真。一緒に地獄まで堕ちてもいいという妻の愛と、養子としてではなく祐真自身を見つめる養父の愛に心がほぐれていく。しん…と静かに胸に沁み入る作品です。全編に登場する友五郎親分も温かくて好き。2012/08/16
天の川
23
哀しく、切なく、包み込まれるように暖かい…心にしみ入る珠玉の作品群だと思いました。表題作の「しずり雪」は別なのですが、その他のどの作品でも気になったのは「父」でした。淳之祐の切腹をした父、おさとのために金を工面し、勘助をかばって死んだ父、祐真のことを案じながら絶命した父(祐真の父の想いと淳之祐の父の想いは、多分似ている)、「お前の仇は私の仇」という祐真の義父…父の不器用な愛情を感じ、涙が次々出てきました。本当に、山本周五郎、藤沢周平作品に匹敵する余韻を感じました!文庫本、買います。他の作品、追っかけます。2012/08/29
よっち
13
安住洋子さん著書の1冊目。短編の表題作から始まり、中編の城沼の風で終わる時代小説。苦しい生活の中で、その時々を懸命に生きている登場人物達が心に強く残ります。長編の作品も読みたくなる作家さんです。2012/07/21