内容説明
浩輔と龍太、龍太と母―全霊を捧げる一途な愛、それは自らの救いのためだったのか?果たせなかった母への想いを投影した偽りのない行動がどれほど相手を追いつめていたことか…。懊悩と諦念…贖罪の果てに枯れ果てる感情の吐露。歪んだ愛、そして捩れた運命…。儚い生と確かな死、その鮮かな交錯の物語。
著者等紹介
浅田マコト[アサダマコト]
女性誌編集長を経て、『エゴイスト』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はにこ
57
映画化された作品という情報のみで読んだ。ゲイの人の生き辛さが彼等の「ごめんなさい」に感じられた。男同士の関係だって誰に迷惑かけているわけじゃないのにね。浩輔のお金という形でしか愛情を示せないと思っている姿が悲しかった。恋人やその母親のためになりたい。そう考えることはきっと彼等にも痛いほど伝わっていたと思う。作者の自叙伝的な小説ということ。作者が亡くなっているので、きっと今は4人であちらの世界で仲良くしていると信じたい。2023/09/10
ジュン
50
ズバリ純愛物です。どこまでが愛でどこからがエゴなのか読み手に問いかけて来る物語。愛する人やその母親を守る為に自分がしたかった事が、実は自分のエゴで相手を追い詰めていたのではないかと苦しむ主人公。実は愛する人のためではなく、自分が母親にしてあげられなくて後悔している事を、恋人に成り代わってその母親を身代わりにしてるんじゃないかと葛藤する主人公。それはピュアで良い人過ぎるから悩むこと。願わくばこの美しい物語を変なフィルターを掛けて見て欲しくない。異質と言う言葉で傷つく人がいなくなる世の中になります様に…2023/03/10
ω
45
タイトルが秀逸ω! 愛ってエゴで押し付けで……それで良いじゃないの。 筆者の自伝的小説ということらしいけど、嘘のない、自分と向き合った素晴らしい作品だと思った。2023/02/11
ううちゃん
39
自分でもびっくりするくらい泣けてしまった。同性愛者である浩輔の、中学時代のいじめから母親の死、大人になって出会った愛する男龍太、その母親。愛する相手を救いたいと思うのは、甘えて欲しいのは、甘えるのは、すべて自分のためなんじゃないか。そう言われるとそうなんだろう。相手の喜ぶ顔が見たい、自然に思っているそれだけのことだって、愛の見返りなんだし。そして親も子どもも恋人も、誰も悪くないことで謝って欲しくない。龍太の母が言った「子供が幸せなら、それでいいのよ」「私たちが受け取ったものが愛だと思ってる」が沁みる。2024/07/26
エンブレムT
39
誰かに心惹かれた理由を「読んでいる途中で取り上げられてしまった本の続きを持っている人だったから」そんな風に表現するセンスが好きです。・・・彼を救いたかった。彼の母を救いたかった。自分と重なる彼を。今は亡き自分の母と重なる、彼の母を。僕は彼に関わることで、読みそこなった物語の続きを新しく紡ごうとしていたのかもしれない。そう。すべては自分のために。・・・これは優しいエゴイストの物語。残酷で、だけど優しいとしか言えない物語。ややウェットすぎる展開に「ここまでしなくても・・・」とは思いましたが。2011/12/15
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