内容説明
輜重兵にスポットを当てた異色の戦争文学。「どうせ、向うが闇の世を生きるのやったら、今日まで仲よかった馬と一しょに、あしたから暮したかて…かめへんやないか。わしは、この馬が好きなんや」終戦直前に軍馬の世話をする輜重特務兵として徴集された肥田善六。馬を忌避する習慣のある地に生まれた善六だが、担当する馬・敷島と暮らすうちに絆が生まれ、復員時には全財産をなげうって買い取ることに。敷島は大荷物の運搬や農耕などに活躍し、善六はそれなりに蓄えもできたが、映画の撮影に協力したとき、敷島が大事な蹄に致命的なけがを負ってしまって…。戦争の爪痕と時代の変遷、差別したがる日本人の特質、他者への愛情など、多くの要素が盛り込まれた名篇。併録の『兵卒の〓(たてがみ)』は、『馬よ花野に眠るべし』の1年前に書かれたもので、輜重隊時代のみにスポットを当てた吉川英治文学賞受賞作。いずれも輜重特務兵であった著者の実体験をもとに描かれており、思い入れの強い作品である。
著者等紹介
水上勉[ミズカミツトム]
1919(大正8)年3月8日‐2004(平成16)年9月8日、享年85。福井県出身。1961年『雁の寺』で第45回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。