内容説明
癌の妻を救うために奮闘する作家の体験記。―寿美は眠りながら、微笑をうかべていた。顔は少し痩せているが、一向にとげとげしいところがなく、優しく美しい微笑の表情であった―。いつも元気で病気とは無縁だった妻・寿美が、お腹の違和感を訴えた。いくつかの病院にかかるものの、いずれも胃カタルとの診断。だが、実際には卵巣癌で、余命いくばくもないことが判明する。お世辞にも愛妻家ではなかった「私」は、その日からなりふり構わず治療法を探しはじめる。臍の緒、梅の木に生えた猿の腰掛、研究中の新薬…。効果があったのか、手の施しようのなかった状態から、手術できるまでに病巣は小さくなり、1年以上持ちこたえたが―。芥川賞作家が万感の思いを込めて綴る体験記。
著者等紹介
近藤啓太郎[コンドウケイタロウ]
1920(大正9)年3月25日―2002(平成14)年2月1日、享年81。三重県出身。1956年『海人舟』で第35回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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