内容説明
柴山芳三が事業に失敗して困窮しているとき、管財人として現れ、救いの手を差しのべた小田村大介は、じつは芳三が没落するきっかけを作った人物だった。豪腕の実業家であり、気鋭の政治家でもあった小田村は、あるとき芳三の娘・月子を強引にさらい、自分のものにしてしまう。月子は一男一女をもうけ、愛人として空しい日々を送っていたが、短歌に生きる希望を見いだし、小田村の死後もたくましく生きていこうとするのだった―。作者の父・堤康次郎をモデルとした『父の肖像』と対をなす作品で、歌人でもあった作者の母・青山操とそのきょうだい、そして作者自身と思われる人物が登場する自伝的長編。
著者等紹介
辻井喬[ツジイタカシ]
1927年(昭和2年)3月30日‐2013年(平成25年)11月25日、享年86。東京都出身。本名・堤清二。実業家として活躍する一方で詩人・小説家としても旺盛な活動を行い、1994年『虹の岬』で第30回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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