内容説明
聖地巡礼スポット・台南を舞台にした表題作ほか、珠玉の短編5編。明治、大正、昭和の3つの時代にわたって、詩歌や小説、文芸評論など幅広い分野で足跡を残した佐藤春夫の、珠玉の小説アンソロジー。表題の『女誡扇綺譚』は、日本時代の台南を舞台に、鄙びた町の姿や、没落豪族の娘の霊との出会いを描いた作品で、作者自ら「五指に入るであろう」と評した幻想的な傑作。改稿を重ねた渾身の一作『田園の憂鬱』は、田舎に移り住んだものの周囲と溶け込めず、次第に病んでいく文学志望の青年を描く。他に処女作品『西班牙犬の家』のほか、『のんしゃらん記録』『美しき町』を収録。『大正幻影』で佐藤春夫を掘り下げた評論家の川本三郎氏が解説。
著者等紹介
佐藤春夫[サトウハルオ]
1892年(明治25年)4月9日‐1964年(昭和39年)5月6日、享年72。和歌山県出身。詩人として1921年に『殉情詩集』を発表。1960年文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ユカ
4
この頃の小説って、人間の醜い心の動きやら行動やらを、そのまま飾らずに描いてあって、たまに本当にいたたまれない。しかしどの話も楽しんだ。オチがないのが良い。2020/10/07
でろり~ん
1
田園の憂鬱以外は初読。改めて知らされた感じで驚くのは、書かれた年齢のとても若いということでした。さんまの歌もそうですが、著者の創作意欲は随分若いうちにオフピークになっていたのかしらん、とかも考えてしまいました。カタカナ英語をけっこうな頻度で使っていますが、当時の流行りなんでしょうかね。文体としてはダサイ気もします。大正時代なんて想像するだけなのんですが、空気感として、この著者は昔という感じを与えませんね。面白い、という内容ではなかったのですが、楽しめました。クリエイティブな一族。愛子さんはご健在ですよね。2020/04/30