出版社内容情報
福永 武彦[フクナガ タケヒコ]
著・文・その他
内容説明
帰りの遅い父を待ちながら優しく甘い夢を紡ぐ孤独な少年の内面を、ロマネスクな文体で描いた表題作「夢見る少年の昼と夜」。不可思議な死を遂げた兄の秘密が自分の運命にも繋がっている事実を知った女性の生を見つめる「秋の嘆き」ほか、「死神の馭者」「鏡の中の少女」「夜の寂しい顔」「未来都市」「鬼」など、意識の深い底に横たわる揺らぎを凝視した福永ワールドの短編14作。初版単行本『心の中を流れる河』『世界の終り』より編纂した一冊。
著者等紹介
福永武彦[フクナガタケヒコ]
1918年(大正7年)3月19日‐1979年(昭和54年)8月13日、享年61。福岡県出身。1972年『死の島』で第4回日本文学大賞受賞。作家・池澤夏樹は長男(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
68
池澤夏樹編集の日本文学全集で、福永武彦の文学に出会った。この本は、現在入手困難な作品を小学館がペーパーバックと電子書籍で出版するP+D BOOKSの一冊。こういう小説が今読めるのは有難い。少年の夢、病院や船旅での妄想、未来世界の幻想、狂気が生む世界の終わり。自分の心の不安定さと生きることの苦しみが文章の節々から湧き上がってくる。その文章だから表現出来たであろう幻想世界は、心の深淵を描いている。もっと福永武彦を読んでみたくなった。2021/03/22
北風
20
新潮文庫で長らく絶版でしたが、まさかの次々と復刻! 特に思い入れのあるのがこれです。 透き通るような透明感の美しさは言葉で表現するのは難しい…。 ふたたび読めたことに感謝!2018/04/01
スナフキン
13
14もの短篇が収められている。どれも作者の内面にフォーカスした幻想的でロマンチックな作品だ。生と死、現実と夢、正気と狂気の境が曖昧な独特の世界観を心ゆくまで堪能した。贅沢な一冊。本書を数百円でクリック1つで買えるとはいい時代になったものだ。2021/10/17
冬見
10
【夢見る少年の昼と夜】 引越しを控えた少年は言葉を蒐集し、好きな女の子を探して夜の町を歩く。「僕」が寂しいのは、母さんが恋しいからでも、父さんと縁日に行きたいからでも、引越すからでもない。「僕」が子どもだからだ。 【秋の嘆き】 自殺した兄の秘密。取り返すことのできないもの。自分ではどうしようもないもの。時限爆弾を抱えたような不安と共に、彼女は生きてゆく。読後、どうしようもなく寂しくなった。 【風景】 小説家は療養所で出会った男の運命を想像する。かつて共に暮らした女を亡くした男は幸福な家庭を夢見ていた。2019/04/27
アレカヤシ
5
14の短編。短編は長編みたいに大きなうねりはないけど、短い分、焦点が定まっていてこれもまたいい感じ。ユーモアのあるものや、空想科学小説など、バラエティーに富んでいるのも楽しい。自己の分裂?を書いたもの(「鏡の中の少女」「死後」「夜の寂しい顔」「世界の終り」)が多く、とても気になった。 「未来都市」も好きだった。(愛はもっと真剣な、不安な、絶望的な欲求なのです)P336 作者が自身の(愛)の姿をはっきり書いてる。 どうしてもよく分からなくて、違和感があったのは「幻影」で、特にP123~のところ。2017/10/13