出版社内容情報
奈良・長谷寺を舞台にした“妖かしの世界”
愛する野田涼太郎と初めて結ばれたにも拘わらず、翌日、なぜか吉村深美は姿を消してしまう。
一年後、牡丹で知られる奈良・長谷寺の門前町、初瀬で深美は死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が遺されていた。深美の死因を探求すべく初瀬へ向かった涼太郎が見たものは……、いとも妖しげな無明世界だった。
耽美的な幻想文学の秀作「春喪祭」を含む、著者渾身の短篇6作を収録。
赤江 瀑[アカエ バク]
著・文・その他
内容説明
愛する野田涼太郎と初めて結ばれたにも拘わらず、翌日、なぜか吉村深美は姿を消してしまう。一年後、牡丹で知られる奈良・長谷寺の門前町、初瀬で深美は死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が遺されていた。深美の死因を探求すべく初瀬へ向かった涼太郎が見たものは―いとも妖しげな無明世界だった。耽美的な幻想文学の秀作「春喪祭」を含む、著者渾身の短篇6作を収録。
著者等紹介
赤江瀑[アカエバク]
1933年(昭和8年)4月22日‐2012年(平成24年)6月8日、享年79。本名は長谷川敬。山口県出身。1983年『海峡』『八雲が殺した』で第12回泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
26
短篇6作。 表題作が一番作者らしい、耽美的で幻想的な小説で良かった。長谷寺には訪れたことがあるが、長谷寺の風景を見事に活用した素敵な作品。 他の作品は今まで読んだ短篇に比べるともう一つかな・・・、今まで読んで面白かった短篇に匹敵するのは「夜の藤十郎」くらいか・・・。 ★★★2018/03/01
いやしの本棚
13
冒頭の「夜の藤十郎」からもう、物語に「襟首むんずと引っつかまれて」、幻妖の闇に「引きずり込まれ」てくらくらでした。やはり表題作が私の好みすぎて、ふつっと途切れるように終わる、その先を、想像せずにはいられなかった。この余白の味わいこそ、読むことの至福だと思う。ああもう眼裏の闇に浮かぶ長谷寺の登廊…牡丹の白、薄紅、深紅のグラデーション…花をかきわける墨染めの衣…近づいてくる妖の僧の姿が山本タカト氏の絵で余裕で再現できます死ねる(うっとり) 2019/09/29
冬見
13
民話のようだ、と思った。けれどそれは、古くさいとかそういう意味ではなくて、これから先これらの物語は延々と読み継がれてゆくのだろうという奇妙な確信を持ったからだ。 幻想はこの世界によく馴染み、当然に存在する事象として描かれる。彼らにとっては日常でも、外から覗けば幻想で、こちらからすれば非日常。しかし、一たび境界を越えれば、あっという間に幻想に呑まれる。そうして、呑まれた者は幻想の一部となる。2017/10/23
Ayah Book
6
幻想と耽美の短編集。美しい女形は何故夜鷹に堕ちたのか?「夜の藤十郎」かつて宦官だった異形の美をめぐり、子供時代の記憶が呼び覚まされる「宦官の首飾り」、高校生達のひと夏の思い出・・・のはずが「七夜の火」等、どれも面白かった。2017/09/19
なお
4
短編集、幻想的で耽美、若干匂うー赤江漠さんってこういう作風だったのね、全然知らなかった。意外に読みやすかったけど、後味はどれも若干悪い。2022/07/03