出版社内容情報
高倉健主演作原作、居酒屋に集う人間愛憎劇
国立で広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋「兆治」を営む藤野英治。輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった、さよの転落を耳にするが、現在の妻との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。
周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざ波のような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩・河原に挑発されても、頭を下げるだけの英治。
そんな夫を見ながら妻・茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた……。
同作品を原作に、高倉健主演の映画「居酒屋兆治」は、舞台を国立から函館に移して、1983年秋に公開された。
山口 瞳[ヤマグチ ヒトミ]
著・文・その他
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねりわさび
90
居酒屋を経営する男を軸に、昭和の人間模様を描いた連作短編小説。悪くいうと男女ともに下卑たセリフの応酬が続くドラマ作りなのですが、歯に衣着せぬ登場人物たちの作るストーリー導線により進行はスムーズ。演歌的な作風がお好きならお勧めします。面白かったですね。2024/06/10
まいど
3
山口瞳の作品を読んだのはずいぶんと久しぶりだ。 ぼくは呑兵衛のイロハを山口瞳に教わった気がする。 彼の著者「酒呑みの自己弁護」の初版は15年も探してやっと手に入れた。 居酒屋兆治も高倉健の映画を観たけどどうも「魚影の群れ」と混じってしまって良くない。 狭くて汚くてな店の感じがそっちの方がしっくりくるのだ。でも高倉健は良かった気がする。 自分もずいぶんと年をとった。今夜あたりは良い呑兵衛に近づけているか考えながら呑むのもイイかもしれない。2017/06/02
だいすけ
1
後世に受け継がれるべき名作でありながら入手困難な作品を販売するという小学館のP+D BOOKSでよんだ。 面白い本、話題の本を読むのもいいことだと思うが、日本が誇る文豪の昔の作品も読んでおいて損はないと思って手始めに居酒屋兆治をよんでみた。映画にもなっており高倉健さんが主演をしたらしい。居酒屋に集う個性溢れる人達の人間愛憎劇であった。2015/08/20
アンパッサン
0
映画が大好きだったので、読んでみた。いかにも、山本周五郎を溺愛なさっていた作家が書かれたって感じ。 たとえば、 「世の中には頭のいい男がいる。他人のすることを悪意としか受け取らない男がいる。保身のために全力をあげて戦う男がいる。……しかし、兆治は徒党を組むつもりはなく、人気者になりたいと思ったこともなかった。」なんてところがすっごく。 ってか不器用に生きている人間は、主人公兆治寄りに生きちゃうよなあって思います。兆治みたいに生きたいし。2017/06/08
kikizo
0
昭和の香りがプンプン。久しぶりの瞳さん。人間臭さと青臭さが同居した感じが何とも言えない。読み終わった後、ちょっと一息つきたくなった。2016/02/25