出版社内容情報
中上健次が故郷・紀州に描く“母の物語”
「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。
海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。
若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。
子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。
中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
中上 健次[ナカガミ ケンジ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まるっちょ
12
フサがあまりにも健気で…健気すぎて涙が出てくる。もう辛すぎて感想が書けない。こんな感想でごめんなさい。2018/02/21
けろ
2
5人の子供を産み落とした文盲の母の人生。ところどころに出てくる鳳仙花の描写が瑞々しくフサの様子を表しているが、最後秋幸に他の種とごちゃまぜにして蒔かれててしまうのは象徴的。本書は母がでてくる短編集に水を介してつながっている。昭和の大作家、早世したのが悔やまれる。2017/11/18
けろ
0
再読2017/12/11
フジノケン
0
冒頭の水仙をみるフサの瑞々しい印象がこの物語のすべてを貫いている。それは作中で歳を重ねても変わらずフサという女性を魅力的にみせている。2023/07/08