出版社内容情報
アイヌ語を命がけで残した一人の少女の生涯
アイヌは北海道をはじめ、樺太や北方四島に住んでいた日本の先住民族である。豊かな自然に育まれた狩猟採集の民であり、歌や踊りに秀でた、独特の文化を持つ民族であった。だが、明治期に入って日本政府が北海道を開拓し始めると、様相が変わってくる。アイヌは住んでいた土地を追い払われ、いわゆる「同化政策」によって日本人化させられるに至ったのだ。アイヌは言葉を持ってはいたが、文字は持たなかった。日本語教育によって、徐々にアイヌ語を話せない人々も出てきた。アイヌ語という民族の精神的な拠り所すら失われつつあったのだ。そんな中、アイヌの少女・知里幸恵とアイヌ語研究者・金田一京助の運命的な出会いが訪れる。生来聡明であり、偉大な語り部を祖母に持つ幸恵は、アイヌ語と日本語を巧みに操れる唯一無二の存在だった。そして幸恵は金田一とともに、一生をかけた大事業に取りかかる。『アイヌ神謡集』である。
【編集担当からのおすすめ情報】
解説は小説家の池澤夏樹氏が寄稿。
内容説明
『アイヌ神謡集』というアイヌ語の物語集を書き上げてわずか19歳という若さでこの世を去ったアイヌの天才少女。
目次
第1章 アイヌの少女
第2章 アイヌであること
第3章 金田一京助との出会い
第4章 ユカラのために
第5章 銀のしずく
学習資料館
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
83
図書館本。 アイヌ…。神謡集…。100分de名著(実は未視聴)で出てたアレですね。 文字の無い世界…。ヒューマニエンスの文字編で識字障害の方の豊かな才能(絵画の才能が紹介されていた)が放送されていました。文字の存在が豊かな世界を見えなくさせているのか?文字は文字で便利なのですが…。アイヌ神謡集を読む機会があれば字は二の次にして心のイメージを膨らませることを第一にして読みたい。あいにく、文字の無い豊かな世界がどんなものか見当がつかないので…。2023/03/11
ゆみきーにゃ
72
アイヌ文化を後世に残した知里幸恵。子ども向けなので無知の大人が読んでもわかりやすい!アイヌ文化への興味が湧く。2022/05/07
鷺@みんさー
48
彼女のことをこれまで知らずにいた。明治政府の「北海道旧度人保護法」で生活の糧を取り上げられアイヌとして差別に遭いながらも、金田一京助との出会いによってアイヌの神話や昔話をローマ字表記→日本語訳の一冊の本として完成させる。19歳で夭逝した天才少女が、病魔と闘いながら残した文化の伝承の役割は大きい。また、文字文化がないというだけでバカにする世間の風潮を否とし、「アイヌの人は記憶力に優れていて素晴らしい」と絶賛した金田一博士の人の好さも際立っている。2018/04/08
たまきら
37
日本人の夫を持つアメリカ人(白人)女性の漫画で、「旦那さんアジア人にしてはハンサムだね」と言われ怒る描写を見たことがあります。「あなたきれいねえ、両親どちらが白人?」と言う誉め?言葉。「すべての子が幸せでありますように」と願う少女の後ろで床を磨く召使の少女…。この本を読んでいて辛いのは自分たちが無意識のうちに持つ理想と現実の違いでしょうか。同胞を自分の文化を愛し、同時にその素晴らしさを伝えるため日本人と協力し素晴らしい研究の道しるべを作ってくれた素晴らしい人がいたこと、忘れないでいたいです。2020/12/30
かおりんご
25
児童書。アイヌの文化を伝えた功労者、地理幸恵。彼女の生涯を子供にわかりやすく伝えてくれます。銀のしずく記念館には、是非とも行きたいと思う。幸恵が手伝った本が、岩波から出ているから、そちらも読みたい。ますます、アイヌ文化への興味が湧きました。2021/03/09