出版社内容情報
誰もが経験したことがあるような悪夢の世界を再現し、コミック界に金字塔を打ち立てた「ねじ式」をはじめ、作者の代表作ばかりを集めた短編集。巻末に、映画『ゲンセンカン主人』に主演した俳優/佐野史郎の解説を掲載。
▼第1話/ねじ式▼第2話/沼▼第3話/チーコ▼第4話/初茸がり▼第5話/山椒魚▼第6話/峠の犬▼第7話/噂の武士▼第8話/オンドル小屋▼第9話/ゲンセンカン主人▼第10話/長八の宿▼第11話/大場電気鍍金工業所▼第12話/ヨシボーの犯罪▼第13話/少年▼第14話/ある無名作家●あらすじ/1間の狭苦しいアパートに住む夫婦。売れない漫画家の夫を、ホステスをする妻が養っている。その妻がある日、夫に向かって「文鳥が飼いたい」と言い出した。夫は渋るが、お金まで用意していた妻に押され、彼らは連れだって文鳥を買いに行く。いつしか「チーコ」と名付けられたその文鳥は、しだいに夫にも可愛がられるようになっていた。そんなある日、夫は遊んでいる最中に、誤ってチーコを床にたたき付け、死なせてしまう(第3話)。▼温泉にやってきた武士・平田は、泊まった宿で相部屋を言い渡される。部屋に入ってきた男は異相の持ち主であり、かつ何気ない動作にもすきがなく、平田の目にはいっぱしの武芸者と映った。その後も平田は彼の振る舞いを観察し続け、確信をもって「彼は宮本武蔵である」と宿の主人に告げる。主人がそのことを触れ回った結果、宿にはたちまち近所から客が押し寄せ、超満
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
86
この本を購入したのは20年ほど前だろうか。PCゲームの「ねじ式」をプレイしたことがあるというツワモノの話を聞いたとき、私がこの本を既読であったかどうかの記憶は曖昧だが、いずれにせよその頃に何度も読み返したのは間違いない。何度読んでもわからない世界だった。時が過ぎ、私も様々な経験をし、そろそろこの漫画を理解できるのではないだろうかと期待して読むも太刀打ちできない。しかしわけわからんところがやはり良い。さらにわけわからんであろうPCゲーム版とか、本当に羨ましかったな。表題作以外だと「ヨシボーの犯罪」が好き。2021/07/06
肉尊
69
ノスタルジックで退廃的、官能的な世界観が凝縮された異色の漫画。噂に違わず、インパクトの強い短編集だった。「ゲンセンカン主人」はドッペルゲンガーを見ると死ぬ意味を教えてくれる。それは自分とウリ二つの存在を確認することで、自分との差異が確かめられ、自分にないものに対する羨望から、自らの存在を否定せざるを得ない「超越的な他者の存在」なのだろう。この作品は理性では割り切れない解釈の幅がある。それが何度も読み返したくなる一種の中毒性をもたらすのだろう。2022/12/24
GaGa
55
現実逃避をしたいのか(笑)久しぶりに読む。「チーコ」なんかも好きだがやはり圧巻なのは「ねじ式」ぐいぐいと異世界へ引きずり込まれていく様子はどうにも眩暈すら感じるくらい。漫画で表現された芸術作品ではないかと思う。つげ氏の頭の中は一体どのような構図なのだろうか。2012/10/22
ハイカラ
44
夢の如き世界や人間の寂しげな暮らしが描かれている短編漫画集。巻末エッセイにあった「闇だらけで真っ暗な中にも、必ず光はある」という言葉になるほどと思わされた。話の中では『ねじ式』『山椒魚』『ゲンセンカン主人』『ヨシボーの犯罪』が特に面白かった。2016/03/09
たかしくん。
39
友人から勧められて、初「つげ義春」です。全14作を通して感じられる、シュールかつナンセンスな雰囲気が、否応なしに迫ってきます。私のお気に入りは以下の4作品。「ねじ式」:そのアングラ感満載のストーリー展開はまさになんじゃこりゃ?の世界。「チーコ」:最後の場面はしんみりとします。「大場電気鍍金工業所」:町工場と硫酸、そして、こちらは何とも救われないエンディング。「ヨシボーの犯罪」:不気味としか言いようのない出だしが・・・。2014/10/20