出版社内容情報
頭角を現していく同期生に焦りを覚えるダンサー・マリオ。彷徨する青年の心の軌跡をドラマチックに描く長編ロマン。
ダンサーのマリオは実力はあるのに役に恵まれない。そんなとき、死んだと思っていた母がローマで生きている事を知り、マリオの心はバランスを崩し始める。彷徨する魂の軌跡を描くドラマチック・バレエロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
71
3本のバレエがテーマの短篇が収録された文庫。なんなんだこの素晴らしさは!!萩尾先生の作品は読むといつも予想をどーんと上回る感動に包まれるけれど、この短篇集は一番好き。詳しくはないけれど、世界観のすべてが大好きなバレエ。その世界を取り巻く人間模様のドラマだけに留まらない、創造される過程の人の葛藤の苦々しさも愚かさも美しさも詰まっていて、読めて本当によかった!BLっぽい雰囲気もあった「青い鳥」の寂しくも美しい最後の余韻も素晴らしかった。萩尾先生の本格バレエ長編が読んでみたいなぁ。2018/03/22
Y2K☮
40
衝動買い。バレエものの短編集。誰もが認める可能性を秘めながら、何かがひとつ足りない。そのせいでチャンスに恵まれずに鬱屈している。そういう人はどこにでも見受けられる。著者はそのタイプではなかったと思うが周囲には大勢居たはず。でもその何かさえ見つければそれまでの停滞が嘘みたいに一気にブレークする。愚痴っぽくて気難しい感じだったのが急に物分かりのいい穏やかな人になったりする。中邑真輔や北斗晶などプロレスラーにもこのタイプは少なくない。その何かのヒントが何となく視えた気がする。表現する仕事なら確かにそれが正解だ。2019/02/11
petitlyz
19
【図書館で借りた本】「感謝知らずの男」を読んで、解説で言及されていたこちらも読んでみた。セットという感じ。バレエに限らずアスリート、芸術表現には心のバランスとの密接な関わりがあると思う。ローマへの道はそういう意味だったのか…と思った。一度深く沈むから高くジャンプできるという感じ。これも読んでよかった。2021/05/20
ぱんぺろ
18
様々の表現が人間にはあるが、萩尾望都はやはり最高峰のひとりではなかろうか。完璧な構図、的確な描写、深い言い回し輝く演出あれやこれやでも褒め飾り尽きない、そんなハズレ無しといわれる萩尾作品群にあって唯一無二の強烈な感動を本書はくれる。私は正義というコトバが大の嫌いで、嫌いが過ぎて辞書から削除したクチで、立派な悪の対義語に認めたりしない。悪の対義語は愛(異論はミトメない)である。なぜなら愛も悪もひとり人の中にねむり揺さぶられやがて目を覚ます、人生の目的や破滅を導く豊かで恐ろしいものだから。続く→2016/09/28
芙蓉
8
「感謝知らずの男」を先に読んだのでこちらもいそいそと購入して読んだ。バレエ漫画。萩尾望都さんの描く嫉妬や不安や後悔などがキャラクターたちの身になっているなあというかああそういう感情あるあるとなるのですごい「青い鳥」「ロットバルト」もよかった。2020/07/12