出版社内容情報
表現の自由を侵す権力と闘う映画人たち
第二次大戦後。ソ連とアメリカ、二大大国の冷戦が始まった。
ソ連の力に強い脅威を感じた米国右派の政治家は世論の
喚起を狙って、共産党員および共産党シンパと見られる人々を
厳しく排除した。この赤狩りの陣頭指揮を取るFBI長官・エドガー・フーヴァーは、
当時の娯楽の王であった映画界にいるアカを葬り去ることを
宣言した。非米活動委員会(HUAC)による聴聞会が始まる。
ハリウッドの映画人たちはこの権力の弾圧といかに闘うのか!?
【編集担当からのおすすめ情報】
権力の弾圧の中で映画人たちはどのように闘い
どのような作品を残したのか?
著者・山本おさむ氏が長年温めていた入魂の作品です。
ぜひお買い求めください。
山本 おさむ[ヤマモト オサム]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
58
山本おさむの只今連載中の新作である。第二次大戦後の自由の国アメリカ・ハリウッドで行われた共産主義者狩りを扱った骨太な漫画である。有名な名画の陰にこんなドラマがあったとは。登場人物はたくさんいるが、私が印象的だったのは、共産党を裏切った女性の話。会社に搾取され疲れ果てた父の介護をしつつ公務員になり詐欺もしていた同性愛者の彼女。ガサ入れを機に共産党を裏切ってしまうのだが、彼女を好きだった男性党員の告白に涙を流しながら答えたエロティックな言葉が哀しい。あと、オードリー・ヘップバーンの事を好きになってしまった。2018/03/20
たまきら
36
大衆を管理するには娯楽から。徹底的に共産主義の臭いを排除しようとする思想管理は、これまた洗脳に近いものを感じさせて恐ろしい。東西どちらもトップのすることに変わりあないのかもしれない…怖いなあ。映画「絹の靴下」を見た時に感じた違和感をふと思い出した。綿密な調査をして描かれているんだろうけれど、どこまでが事実なんだろう…。2023/06/30
ふじ
19
1巻無料。見せしめにハリウッドをターゲットとして第二次大戦終了間際から始まった赤狩りが描かれた漫画。敵はナチスの次は共産党。「支配者は国民が自由を選ぶと困る」という言葉が印象的。理不尽にターゲットにされた側がFBIにハメられる様はあまりに不憫で、物語で読むのは辛い。自分には淡々と事実が書かれた本の方がいいかも…2022/01/27
ぐうぐう
15
山本おさむの新作は、レッドパージを描く。『ローマの休日』『エデンの東』『猿の惑星』、一見何の脈絡もないように見えるこの三本の映画に、赤狩りという共通の水脈が流れている。そんな冒頭でのツカミは、とても成功している。けれど、非米活動委員会から19人のハリウッド関係者が召喚され、第一回聴問会が開かれるまでの過程は、参考文献をそのまま引用したかのような硬さが感じられ、ドラマがなかなか躍動しないもどかしさを覚える。山本おさむの生真面な性格が裏目に出た印象だ。2017/12/01
highig
10
( ^ω^)戦後アメリカで吹き荒れた共産主義者への迫害という少し突っ込んだテーマを描く意欲作。まあその辺は赤旗にも漫画を掲載していた山本おさむの『描きたさ』も加わっているのだろう。一巻ではハリウッドに根ざす共産主義者にFBIが迫り、思想表現の自由を巡ってせめぎ合う内容に。ローマの休日や猿の惑星等、誰もが知っている名作の裏に、多分の誇張はあるだろうにせよ、こういった政治的な思惑が隠されていたという話は刺激的で興味深い。実在の人物や事件を描くだけに若干硬いが、ここから物語的な柔軟性を加えていってほしいですお。2020/07/26