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出版社内容情報
私が死ぬまでを撮ってほしい――病の母の願いで始まった優太の映画制作。母の死後、自殺しようとした優太は謎の美少女・絵梨と出会う。2人は共同で映画を作り始めるが、絵梨はある秘密を抱えていた…。現実と創作が交錯しエクスプローションする、映画に懸けた青春物語!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムッネニーク
117
59冊目『さよなら絵梨』(藤本タツキ 著、2022年7月、集英社) 鬼才・藤本タツキの長編読み切り。 「映画制作」というモチーフを扱うことで、作中世界における現実と虚構の境目を曖昧にぼやかす。 読者に安定感を与えず、絶えずゆらゆらとした浮遊感、ないしは不安感を与えるような構造になっており、読後感は唯一無二。 主人公の自主制作映画は、不謹慎だと観客から罵倒される。これには著者の前作『ルックバック』に寄せられた的外れな批判を思い出さずにはいられない。 「ファンタジーがひとつまみ足りないんじゃない?」 2022/08/10
眠る山猫屋
89
言葉にならない。個人的に刺さり抜けない矢のようだ。“物語”の在り方を揺さぶられ、改められる。それくらい響いている、今も。優太は余命幾ばくも無い母に頼まれ、その残された日々をスマホで記録した。学園祭で上映するも散々な扱いを受けるが、唯一認めてくれた絵梨とリスタートする・・・そんな話で終わる訳もない藤本タツキ作品。そこまでだって美しい良い話だし、縦四コマのシーンや、あえてブレを多用し視覚的な映像効果を狙っているのもおもしろい。物語は二転三転、どこまでを虚構と捉えるかで深度が変わる狡猾さを含みながら(続く)2022/07/19
keroppi
66
スマホで見る漫画で、スマホで撮る映画が描かれる。スマホで見た映像がコマ割りとなる。人の実態は、スマホを通してしか感じられないのか。人の死すら、スマホを通して見つめている。心の動揺は、揺れたスマホの画面に現れる。虚像と実像が入り混じり、映像の編集を繰り返す事で、その記憶の深層に迫ろうとする。まさに、今の時代の青春であり、今の時代の漫画なんだなと思う。2023/01/21
bura
63
「ファンタジーがひとつまみ足りないんじゃない?」絵梨の言葉が全てを語っているのかも知れない。優太が撮り続けた母が死に至る動画も、絵梨を撮り続けた動画もすべては優太の妄想の中とも言える。映画と現実が交錯してどこまでが真実でどこまでが創作なのか徐々に見分けがつかなくなっていく入れ子構造。さらにブレる線、コマ割りが時間を生み出す規則性、ブラックアウト、この表現はマンガの三次元化であり、それぞれが天才藤本タツキの新しい進化へのチャレンジに思える。私の心の中にファンタジーをひとつまみ、パラリと落としてくれた。2025/02/28
さくりや
34
やばい。今まで読んだ漫画で1番好きかもしれない。主人公の思春期特有の自意識や承認欲求、母を亡くした喪失感と少しだけの安堵が刺さった。等間隔なコマ割り、台詞のないカット、ストーリー構成、全てがお洒落。ラストシーンの反復はスカッとした。"映画を作る"行為は、欲求の発散であり現実を"切り取る"行為だったんだろうな。ファンタジー をひとつまみ、という言い回しが好き2023/06/12