出版社内容情報
モーリス・センダック正真正銘の遺作。とある兄弟の別れを幻想的でセンシティブな筆致で描くことで『とてもとてもサーカスなフロラ』の作者でもある兄ジャックの死を悼む。
著者等紹介
センダック,モーリス[センダック,モーリス] [Sendak,Maurice]
1928‐2012。絵本作家、舞台美術家。世界的大ヒット作『かいじゅうたちのいるところ』をはじめとして、著作多数。1964年、『かいじゅうたちのいるところ』でコルデコット賞受賞後、1970年に国際アンデルセン賞画家賞、1983年に全米図書館協会によるローラ・インガルス・ワイルダー賞、1996年にアメリカ芸術への貢献によって全米芸術勲章など、受賞多数。2003年にはスウェーデン政府が設立した児童文学作品に与えられる国際的なアストリッド・リンドグレーン記念文学賞の第1回受賞者となる
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954‐。アメリカ文学研究者、翻訳家。著書に『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)、『アメリカン・ナルシス』(サントリー学芸賞受賞)など。訳書トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞を受賞。現代アメリカ文学を数多く翻訳。文芸誌「MONKEY」編集人など多方面で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
50
『かいじゅうたちのいるところ』のセンダックの遺作。離れ離れになった兄弟の再会と別れが鮮やかで優しい色合いの絵で綴られます。物語は抽象的で難解ですが、弟ガイが眠りにつく兄に両腕を枝のように巻きつける最後の場面が心に残りました。このおとぎ話は作者の「別れの言葉である」そうですが、何と印象深い白鳥の歌であることか。ガイは言う「おやすみ/僕の夢を見ておくれ」。兄に、そして読者である私にも。その言葉に、昔彼の絵本を読んでもらい、その溶々たるイメージに身を任せて眠りについた日のことを思い出さずにはいられませんでした。2020/04/03
ぐうぐう
32
絵本における絵と文の関係は、文を絵が説明するか、絵を文が説明しているか、そのどちらかだ。それぞれ補完する関係性ではあるが、決して同等に存在しているのではなく、そこに力関係が見て取れるのだ。絵に力がある場合と、文に力がある場合とに。絵に力がある場合は文が添え物となり、文に力がある場あるは絵が添え物となる。だが『わたしの兄の本』は、絵と文が同等に存在している。どちらかが添え物ではなく、どちらもが同じ力を放っている。だからといって、別々にあるのでもない。その関係性は、まるで兄弟のようだ。(つづく)2017/11/28
とよぽん
29
不思議な魅力を持つ絵本だった。図書館の、書架に柴田元幸さん訳、という背表紙の文字を見つけて。一読では、なかなか分かりづらいところがあった。二度、三度読み、解説なども読んで、何と壮大で、愛を試される厳しい物語なのかと思った。これが遺作ということだが、世界的大ヒット作「かいじゅうたちのいるところ」も読んでみたい。2018/08/26
まりこ
24
子供向けの絵本かの思い手に取ってみたが、地獄・熊が吠え・己を解体。少し恐ろしかった。モーリス・センダックが完成させた最後の一冊だとか。2017/11/05
AKIKO-WILL
23
絵本にしては、序文を読んでも一度読んだだけでは理解できない不思議な世界。絵も可愛らしいよりも美術館に飾られているような感じの絵。翻訳が柴田元幸さんだから手にとってみたが…不思議!2019/12/15