内容説明
古来、漢詩は多くのインテリにとって教養そのものだった。返り点や送りを付けて読む読み下しは、日本人の素晴らしい発明であるが、今ここに、新しく漢字カタカナまじりの七五訳を紹介。古くは江戸時代の芭蕉門下の高弟たちも、近くは井伏鱒二も試みた、遊び心満点の漢詩戯訳。俳句、短歌の愛好家にもぜひ読んでいただきたい一冊。
目次
四季の情景を謳う(イクサノ果テル日ハイツカ―岳陽楼に登る(杜甫)
クニニ帰ルハイツノ日ゾ―絶句(杜甫) ほか)
人生の哀歓を詠む(東京本社ヲ訪ネレバ―洛中に袁拾遺を訪ねしも遇わず(孟浩然)
世渡リ巧者ガ出世シテ―喬侍御に贈る(陳子昂) ほか)
恋と友情と(桃ハイキイキソノ実ハ円ラ―『詩経』(桃夭)
碧玉十六花ナラツボミ―情人碧玉の歌(孫綽) ほか)
酒と食を楽しむ(ハジメハ人ガ酒ヲ呑ミ―酒人某扇を出して書を索む(菅茶山)
カニガ泡フクムスメガワラウ―何十三が蠏を送るに謝す(黄庭堅) ほか)
惜別のうた(キミハ空ユクチギレ雲―友人を送る(李白)
黄鶴楼ヲアトニシテ―黄鶴楼に孟浩然が広陵へ之くを送る(李白) ほか)
著者等紹介
松下緑[マツシタミドリ]
1928年東京に生まれる。父親が外交官だったため、46年まで天津・上海などで過ごす。日通総合研究所では資料室長と『輸送展望』編集長を兼務、鉄道政策・交通政策で健筆をふるう。長年にわたり漢詩の研究を続け、近代詩の世界でも活躍。97年死去
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感想・レビュー
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Ryoichi Ito
6
幼少年期を中国で過ごした筆者は晩年にいたり漢詩を七五調で訳すことを始めた。彼が「漢詩戯訳」と名付けた訳詩は江戸時代から存在する。太宰治は井伏鱒二の訳詩「ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ」を好んだと言うが,著者はこれに疑問を感じ,「「サヨナラ」ダケガ人生カ」を本書の書名にしたと言う。およそ七十の有名な漢詩が原文,訓読,戯訳,解説とともに収められている。2023/04/14
mimm
2
漢詩を五七五の戯訳した一冊。有名どころも多く、親しみ易かったです。聞いたことある漢詩の断片の出典を知ったり、楽しませていただきました。2016/06/09
はる
1
元々、漢詩は好きだけど、これは詩人エピソードだけでなく、訳人エピソードも載っている。訳詩も朗らかでのびのびした感じがあって大好き。個人的にも思い出があって何度も読み返してしまう2017/06/04
佐藤丈宗
1
大好きな一冊。日本人が好きな七五調(俳句、和歌、都々逸などのリズム)で漢詩を訳した素敵な本。本当ならば詩は訳さず読めれば一番いいのだけれども、古来より培われた漢詩の訓読はそれ自体がひとつの新しい詩となるほどレベルが高い。分厚い壁なのだ。この本の七五訳はそれを突き破ってしまうほどのフレッシュさ(しかもオリジナルの詩を逸脱しないで!)と、馴染みあるリズムでズンズンと胸に入ってくる。2016/12/14
ゼロコウ
1
とても好きな本。おじさま向けかも知れないけど。井伏鱒二の厄除け詩集も読んでみたい。2013/06/15