出版社内容情報
孤独な魂が共鳴する心の旅、19の物語
シャネル社の社長として超多忙な日々を送る傍ら若い頃からの夢「書く」ことにも没頭するコラス氏。作家として生み出した4冊目の著書は長く孤独な歩みを続ける「人生の旅人たち」19人の物語。
内容説明
富、名声、すべてを手に入れてなお、男の心には満たされない孤独が広がる。男は旅に出た。孤独な魂が共鳴する心の旅、19の物語。
著者等紹介
コラス,リシャール[コラス,リシャール][Collasse,Richard]
1953年7月8日、フランスに生まれる。’75年パリ大学東洋語学部卒業。’95年ハーバード大学アドバンスト・シニア・マネジメント・プログラム修了。’75年より在日フランス大使館勤務。’85年シャネル入社、’95年よりシャネル日本法人代表取締役社長。’09年、フランスで出版された『SAYA』で「みんなのための文化図書館賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
24
奈良など、郷愁を掻き立てられるだけではなく、現在に昔の風物や侘び寂びが混ざり合っている日本文化や日本人の心の機微の描写が上手い作者だなと思っていたら日本の流行をシャネル日本本部会長を長年、勤めていた方だと知り、納得。特に「息子の帰還」は聖書での放蕩息子の逸話とカインとアベルの嫉妬の逸話が日本の世代交代と相俟って何とも言えない抒情がある。特に家を離れて夢を叶えて成功を収めて放埓な生活を送る次男へ父が誰を跡取りとして認めていたのかを静かに告げる長男の気持ちを考えると切なさと遣り切れなさが込み上げてならない。2016/06/10
Porco
18
シャネル日本法人社長が書いた短編集。この方はビジネスマンなのに長編小説が上手くて、『紗綾』も『遥かなる航跡』も良かった。けど、短編はイマイチかな。2018/03/29
なおこっか
4
冒頭の一篇、視界を遮る日本と、地平線しかないサハラの対比、サハラにより惹かれ一人旅に出る“ぼく”の記述に、この人は真性の旅人なのだと思った。彼の社会的立場はシャネル日本法人CEOということになるのだが、魂は解き放たれて、拠り所のない未知なる広い場所を放蕩する。欧州、アメリカ、日本、世界各地への旅に誘われる短編集。やや過剰なまでに女性礼賛する話より、立場に縛られた父親から某かを受け継ぎゆく話の方が、ぐっときた。2019/06/21
ケニオミ
4
日経夕刊に「Nipponビジネス戦記」というコラムがあります。このコラムをしばらく担当していたのが、当時シャネル日本法人代表取締役社長だったコラス氏でした。彼の文章には私を惹きつけるものがあり、「紗綾」に続き手に取ったのが本書です。「寂しさは自己の貧しさで、孤独は自己の豊かさである」という言葉があります。どちらかというと、寂しさに属する人達についての短編集という印象を受けました。さらりと読めるが、内容があまり残らない。しかし、まとわりつく読後感を残す短編が多かったです。2013/02/26
アヴォカド
4
これ小説だよね?旅エッセイじゃないよね?と何度も確認したくなる。ほとんどエッセイかと思い込んでしまうほどで、おそらく、かなりご自分の人生での出来事を投影しているものと思われる。「長い散歩とメランコリーのバラード」はお話としてもよく出来ている、と思う。その靴屋さんのシーンで登場する9歳の少年が、実にカッコいい。カッコいいというか、もうお洒落だ、粋だ、フランスだ。2012/02/03