内容説明
戦国の世に終止符を打つ徳川政権誕生、その前夜。勇猛無比の武将本多忠勝の娘稲姫と、西軍の知将真田昌幸の息子にして徳川につく信幸の結婚。疾風怒濤の歴史のうねりを生きる人間ドラマを、止まった蜻蛉(とんぼ)が切り落とされる名槍「蜻蛉切り」の数奇な運命に託して描ききる大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
27
本多忠勝の娘稲姫と家康言う所の食えぬ武将真田昌幸の息子信幸との間に縁談が持ち上がる。婚礼の引出物として家の名槍「とんぼ切り」の写しを所望するが、その槍が何者かによって盗まれる。音楽・美術に造詣が深く、刀についても今までの著書で詳しく触れている作家。ヒロインが気が強く男顔負け、という傾向は本作でも受け継がれている。彼の作品は、常に弱者の側から描かれていると思う。弱者であってもせいいっぱい生きたいとする心意気と、その心を無情にも押しつぶしてしまう大きな権力、という図式も繰り返し作品に現れてくる テーマである。2007/02/09
月をみるもの
6
たまたま「真田丸」を見た直後に「信長協奏曲」を読んだら、どちらにも本田忠勝・稲親子が出てきたので、ひさびさに本棚から引っ張りだしてきた。戦場での殺し合いも、平和になってからの権力争いも、うんざりすることに変わりはない。一瞬の生のきらめきを求める忠朝、時を超える業を生み出す正寛(村正)、そして時代が女に与える大きな制約の中で精一杯にはばたく稲と一重。このあと、森さんの商業出版作品が出てないのは本当に惜しい。2016/05/27
朱音
4
本多平八郎(家康の家臣)の娘、お稲とその夫となる真田信幸を、妖刀と刀鍛冶話をからめうまく料理している。森氏なのでもうちょっとひねった話になるかと思ったが素直な時代物で読みやすい。小松殿の描き方が実に好みで、こういう時代だけにいきいきした女性が出てくるとそれだけでうれしいものだ。こういう系統の話、また書いていただけないものだろうか…2010/03/26
satoshi
2
稲姫や本多忠朝、真田信之といったまっすぐな人たちの言動は読んでいてもちろん気持ちいいけれど、望斎や真田昌幸・信繁などひねくれた人たちも、こちらはこちらで筋が通っていておもしろい。前者が普通のハチマキだとしたら、後者はねじりハチマキという感じ。中途半端にねじれたハチマキは巻き心地が悪いだけだけど、この人たちは思いっきりねじれることで、ある意味まっすぐになってる。だから対極にあるようで、時として同類に見えたりする。2011/02/02
らき
1
再読。小松殿と本田家、夫信之の真田家で名槍とんぼ切りを巡り、進む話。小松殿がいきいきとしていて、とても気持ちよく楽しめました。2010/11/08