内容説明
今はまだ人生のリハーサルだ。本番じゃない。そう思うことで、私は「今」のみじめさに耐えていた。これはほんの下書きなんだ。いつか本番が始まる。そうしたら物凄い鮮やかな色を塗ってやる。塗って塗って塗りまくる。でも、本番っていつ始まるんだ?43歳・歌人の真剣エッセイ。
目次
エスプレッソ
現実圧
愛の暴走族
あだ名
あたまたち
つるつるの絶壁
優先順位
世界の二重利用
素敵側へ
リセットマン〔ほか〕
著者等紹介
穂村弘[ホムラヒロシ]
歌人・翻訳家・エッセイスト。1962年札幌生まれ。上智大学文学部英文学科卒。90年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌入門書、翻訳絵本など多数。近年は『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『現実入門』などのエッセイで更に注目を集めている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
155
歌人・穂村弘さんによるエッセイ。やたらネガティブで妄想力逞しくて可笑しかったけど、たまに、ああ〜分かるわ〜と共感してしまうところがあった自分がちょっと怖い。あと、あとがきの最後の歌が…わがはつもののしらがはなげ^^;2015/04/13
あつひめ
134
私もあだ名がなかった子供の一人です。そして友達をあだ名で呼べない引っ込み思案でした。なんか…昔のこと思い出してしまった。心の中にはいくつもの本当と嘘がいりまざってるのが人だと思う。こうじゃないんだけどなぁなんて少しユーモア交えた内容で楽しめた。2013/08/22
めろんラブ
116
可笑しゅうてやがて哀しき・・・という印象のエッセイ集。本当はちがうんだって、こんなもんじゃないのにって、心の中でつぶやいて、もんどり打って。でも思うように変われない。”素敵レベル”は低いまま。中年なのに、自意識の海で溺れ、ちっちゃいことを気に病んで・・・あぁ本当にもう中年なのに、「永遠の青年」すぎる穂村さん。奥様がいらして、きちんとお仕事をされていても、地獄の汁(=エスプレッソ)を啜りながら、終わりなきモラトリアムを生きる苦悩を著して欲しいなぁ。私にとっては、紛れもなく確かな救いなので。2010/01/19
pino
95
今回も笑わせて貰いました。穂村さんとはちょっと違うが、(私の場合)透明なケースの中で自転車をこいでる人形(ピエロが多い)の一生を思うといたたまれなくなる。クジラと大王イカは毎夜どこかの海で戦っていると思い込んでいる。怖い(父の場合)スカイダイビングをしている人達の映像を見て「ほう。人間は、手足を広げると飛べるんか」感心していた。ある日、冷蔵庫から変な音がしたので、製氷ケースを覗くと、色のついた氷が不完全な形でゴロゴロ。「オレンジ味の氷が食べたかった」と父が白状した。鼻毛は抜いてたけど白くはなかった。ああ。2012/06/26
紫綺
75
「怖い」とか「不安」とかいう言葉がやたら出てくる。でもお話はとても面白い。身の回りの何げない出来事が、劇的なドラマのようなエッセイに生まれ変わっていく。作者がネガティブに表現していることが、不思議とポジティブな話に感じてしまう。自虐的なわりに人生を楽しんでいるように見えるし、ある意味うらやましい。2010/11/23