内容説明
盲目のヴァイオリン少年を慈しむ母として、無償の愛を貫くひとりの女として、―崩壊するモダン都市・東京。時代と運命に翻弄される女の一生を描く長篇小説。
著者等紹介
若合春侑[ワカイスウ]
昭和33年宮城県生まれ。東北学院大学経済学部卒業。平成十年、選考委員の圧倒的支持を得て「脳病院へまゐります。」で第八十六回文学界新人賞を受賞。同作は第百十九回芥川賞候補となる。引き続き発表した「カタカナ三十九字の遺書」で第百二十回、「掌の小石」で第百二十一回芥川賞候補となる。その才能は高く評価され、今後の作品に注目があつまっている
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感想・レビュー
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Roy
10
★★★★+ 「脳病院」と同じく旧字で綴られる、壮絶な3話の連作物語だった。最初この女が大袈裟過ぎて滑稽で、笑いまくっていたのだけども、徐々にどんよりと重い物語へと自分の中で変化していった。グロテスクだけど旧字体のせいか上品、すごく良かった。関係ないが、現在の「図」だと思しき旧字に左右対称の美を感じる。2009/01/07
yonemy
4
か弱き山の手の奥様が、たくましい助産婦へと生まれ変わるきっかけが第二次大戦だったのか。環境や世情に流されているようで、世間に非難を浴びながらも自分の気持ちを大切にする主人公。天真爛漫で囚われない振る舞いは純真な心の表れか、周囲はそんな彼女を放っとけないのだろう。そして起こったこと全てを受け入れられる強さは、奥様のままでは得られなかったはず。苦労はひとつも無駄にならないことが染みて、今この時に読んでよかったです。2022/03/18
青豆
3
乙女が女になり母になる。女は不幸や不運に見舞われる度に羽化していく様な気がする。2013/08/02
ナチュラ
2
尾崎多恵という一人の女性の壮絶な半生を綴った物語。昭和10~20年代の太平洋戦争前後の動乱の時代を背景に、度重なる不幸に遭いながらも生きていく。 旧仮名使いで読み難いが、多恵の感情がより伝わってくる感じがする。2013/10/11
cino
1
ワカイスー3冊目。『ちいさいおうち』と同じような背景だけどこっちは絵にしたら花輪和一みたいな・・・ 世間様、旧字の間にお月様が見守っている装丁装画田中明彦。2013/12/05