ヒューマン・ステイン

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  • サイズ B6判/ページ数 462p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087733952
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

71歳のユダヤ系アメリカ人コールマン・シルク。輝かしい経歴を誇る古典学の教授である。そんな彼が黒人学生に対して人種差別発言を行ったと非難され、大学を追われることになろうとは…。そんな発言ができないことは、誰よりも彼自身が一番よく分かっている。なぜなら、彼には人生のすべてを賭けた秘密があったから…。失意のどん底でコールマンがつきあい始めたのは、すべてが対極的な位置にあるフォーニアだった。貧しく、無学で粗野、暴力を振るう元夫につきまとわれ、常に怯えながら暮らしている若い女性。だが親子ほども年の違う二人の恋は、周囲に新たな波紋を巻き起こすことになる…。巨匠フィリップ・ロスが一人の男の運命に20世紀アメリカの苦悩と悲劇を重ねて放った問題作。ペン/フォークナー賞受賞。

著者等紹介

ロス,フィリップ[ロス,フィリップ][Roth,Philip]
1933年、ニュージャージー州ニューアークで生まれる。父はユダヤ人。1959年、処女作品集『さようならコロンバス』が刊行され、翌年、26歳の若さで全米図書賞を受賞、圧倒的な賛辞に包まれる。その後も一作ごとに新たな作風に挑み、ユダヤ人社会を阻害するものに対する反逆、挑戦をテーマにアメリカ社会の繁栄の陰に潜む腐敗を見つめている。また鋭い批評精神と博識に支えられた豊かな想像力によって、現代文学の先端を行く重要な作品を続々と発表している。2001年、アメリカ三部作でペン/フォークナー賞受賞

上岡伸雄[カミオカノブオ]
1958年東京生まれ。東京大学大学院英文科修士課程修了。明治大学文学部教授。20世紀アメリカ文学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

130
この作者の30代の作品「ポートノイの不満」から二作目。ポートノイも良かったが、30年以上経た円熟味と衰えないロック気質に感服だ。一括りにするものではないだろうが、ユダヤ系アメリカ人作家特有の作風があると思った。ジョナサン・サフラン・フォアの「ありえないほどうるさくて…」やピンチョンなど、出だしはわかりやすいのに、その中心から放射線だか渦巻きが広がるような思考。必死について行くと、根底にある訴えに気づけるという体系。その中でも、この作品はそれが昇華されて素晴らしいと思った。深く心を揺さぶられた。2017/01/05

まふ

121
戦争、人種差別、児童虐待、家庭内暴力等、アメリカの人々を蝕む「ステイン」をじっくりと緻密に語ってゆく重厚な物語。主人公は肌の色の薄い「黒人」で学業優秀、スポーツ万能だが「白人のユダヤ人」と偽り、家族を捨てて大学教授となるも、些細な失言を盾に取られて文学部長の職を追い出される。その後71歳の年齢で34歳の無学な掃除婦と愛人関係に陥る…。作者は彼の家族、友人関係を念入りに描写してその人間像に迫るが、真実は闇の中に消えてしまう…重い読後感で改めて人種問題の底の深さを思い知った。 G472/1000。2024/03/26

NAO

62
作家である語り手によって記される、大学教授コールマン・シルクを中心に社会から孤立した人々。この物語の中には、問題を抱えた人物が4人登場する。中でも、継父から性的虐待を受け夫からは暴力を受けていた女性と、ベトナム戦争帰りでPTSDに悩まされ暴力行為に走らずにはいられない彼女の夫が強く印象に残る。話の中に、巣から落ち人間に育てられたカラスが、大きくなってカラスの集団に入れなくなってしまっているという話が出てくる。2024/02/26

すえ

33
幾つかの疑問が明確にならずそのまま残されたが、それらの疑問と真摯に向き合う語り手ザッカーマンの姿が印象深かった。「人種差別」について考えさせられた。非暴力主義を貫くべきとか、必要あれば暴力を持ってして人間の尊厳を守るべきとか色々な主義主張はあるが、私自身「人種差別」を我が事として捉えることが出来たか?残念ながら物語の中の出来事という感覚かもしれない。だからこそ貴重な読書体験だったとも思う。色々な切り口で「人間の穢れ」が濃密に描かれる本作、読み進めるのには相当に骨が折れたが、いつかもう一度読み直したい2020/11/13

星落秋風五丈原

31
【ガーディアン必読1000冊】作者の分身・ユダヤ系作家のネーサン・ザッカーマンが登場するアメリカ三部作の最後を飾る作品。境遇も年齢も違う男女のラブスト―リーは『ダイング・アニマル』と共通。コールマン、フォーニア、フォーニアの暴力的な夫レスター、コールマン排除の先頭に立ったフランス人教授デルフィ―ヌそれぞれが抱える問題―黒人差別、戦争後遺症、DV、大学の荒廃―がそのままアメリカが抱える問題に繋がりそれらを穢れとして排除し、ひたすら浄化に進むアメリカ社会への批判ともなっている。2016/02/22

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