内容説明
彼は、1932年1月、私の人生にはいってきて、それからは一度も立ち去ることはなかった。あのときから四半世紀あまりが過ぎた。そのひとのためには喜んで生命さえも投げだしていいと思う少年の日の友情。第二次大戦前の暗い雰囲気を背景に、貴族の美少年とユダヤ人医師の息子の友情と別れと悲劇的な「再会」を描く必読の青春の書。
著者等紹介
ウルマン,フレッド[ウルマン,フレッド][Uhlman,Fred]
1901年、南ドイツ生まれ。チュービンゲン大学卒業ののち弁護士となったが、ヒットラーが政権をとった33年、フランスへ亡命。パリで多くの芸術家と知り合い、画家を志した彼は、やがてスペインに移り、さらにイギリスへ逃れ、画家として成功するが、60歳になって『友情』を執筆、71年にイギリスで出版されると評判になり、仏・米でも出版されて大きな反響を呼んだ
清水徹[シミズトオル]
フランス文学者・文芸評論家。明治学院大学名誉教授。1931年生まれ。東京大学卒
清水美智子[シミズミチコ]
1932年生まれ。東京大学を卒業後、10年間、TBSラジオ・ディレクターとして社会報道番組を制作。現在、白日会会友
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
97
ユダヤ人の少年と名門貴族の少年の友情を描く小説。作者は画家でもあるので、ナチスに蹂躙される前のドイツの姿が色彩感豊かに描かれている。最後の一行が非常にうまくて、この時代を生き抜いた者の万感の想いが込められているような気がした。2014/02/24
Gotoran
55
かなり日が経ったが、読友レビューに押されて。ヒットラー政権前夜の南ドイツ、16歳のユダヤ人少年ハンスが、転校してきた貴族子息コンラティンと仲良くなる、二人の間には、政治、人種、身分の違いなど、全く問題はなかった。しかしながら、徐々に忍び寄る邪悪な大人の世界が…ストーリは、主人公が親友と出会い、アメリカへ移住し別れるまでが描かれる。あたかもヘッセの青春小説のように思春期の少年の友情にほろ苦さを感じながらも、最後の一文は、かなり衝撃的で、葛藤を感じざるを得なかった。2020/02/15
あこ
20
河合隼雄氏の推薦書。原題が表すようにまさに衝撃の『再会』でやるせない。当時を深く掘り下げているわけではないが、訳注により、この時代について興味をもつきっかけになる。『友情』は、ちょうどナチスがベルリンで勢力を伸ばしてついに政権を獲得するまでの終わりの一年間に対応するハンス少年の物語(1932年〜1933年)。遠い昔の話ではない。大人になっても心の傷は癒えない。2019/12/14
chacha子
18
ベルリンから遠く離れた、シュトゥットガルトでの二人の少年の友情。戦争の影はひっそりと、しかし確かに彼らの世界へ忍び寄っていた。 ユダヤ人のハンスとの出会いが、その後コンラディンをラスト一行のあの行動へと向かわせたのだとしたら… 2015/04/14
けんちゃん
16
読友さんのご紹介本。身分も人種も違うクラスメイトとの友情。男の子同士でありながら、時に甘美に時に激しくぶつかりながら、やがて時代の波に引き裂かれる。思春期の少年の感情ー両親に対して、友人に対して、自分に対してーの揺れが丁寧に描かれています。少年たちにとって遠い出来事だったナチスの台頭がジワジワと自分たちの生活に入り込んでくる様子が伝わってきます。そして結果的に別れた友の決断を大人になって知ったラストシーンが衝撃的でした。あの時代のこんな描き方もあったのだと思わされました。2011/09/05