内容説明
「世界にただこのことを忘れさせないために、生き残りたいと願った…」強制収容所の最高司令官の“館”の道化師として生きのびた4人の男達の運命。淡々と、シンプルに、しかしながら深く、衝撃的な恐ろしい歴史的事実が暴かれてゆく。「人間は皆この地上での神の宮廷道化師にすぎないのか?」復讐のための長い彷徨は、この問に「否!」と確信する宇宙的な美しい答に辿り着く。人間性への信頼を回復する哲学的歴史ドラマ。
著者等紹介
ダガン,アヴィグドル[ダガン,アヴィグドル][Dagan,Avigdor]
1912年、チェコ生まれ。大学在学中から詩人として活動。ヒットラーの台頭により39年出国、ロンドンの外務省に勤務。戦後もプラハの外交官として勤務するが、48年、左翼クーデターが興るとイスラエルへ出国。以後チェコでは発禁。が、ビロード革命後、本国で最も読まれる。イスラエル国籍チェコ系ユダヤ人
千野栄一[チノエイイチ]
1932年生まれ。専門は言語学、チェコ語。東京外国語大学、東京大学、カレル大学を卒業。現在、和光大学教授。東京外国語大学名誉教授
姫野悦子[ヒメノエツコ]
1951年生まれ。1991年7月~1995年9月、チェコへ留学。プラハのカレル大学と国立語学学校でチェコ語、チェコ学を学ぶ
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
28
神に対する人間の存在理由は虚しいものなのか?悲愴な事がある度に私達は思わずに居られない。ナチスの遊興と憂さ晴らしの道化として強制収容所の地獄を生き延びた4人のユダヤ人達。真っ二つになった小人のレオと生き残る為に妻が殺されてもジャグリングし続けたヴァーンの姿に絶句。また、最愛の姉を白血病で亡くし、愛する人も殺されたマックスの神への不信と呪詛が響く。そして妻を殺され、自分も遠回しに関与させられたヴァーンの復讐の余りにも不釣り合いで虚しい終焉に「巫山戯るな!何処まで虚仮にすれば気がすむんだ!!」と叫びたくなる。2016/03/25
きゅー
12
虐殺を免れたユダヤ人が、復讐を通して神の存在を問う小説。私自身が関心を持つ問いとも重なり(復讐ではなく、神のほう)非常に興味深く読んだ。重くて暗い話ではあるが、物語の事件性のゆえに勢い良く読み進めた。ただ、結末については無難で、単純すぎると感じた。その先をさらに問うて欲しかった。彼はなぜそれを神と認識するのか。その神は自分が信じている神と本当に同一なのか。なぜ世界が目的的に作られているように見えるからといって神の存在が必要なのか。いくらでも問いが深まるときに、その入口で納得してしまっているように見えた。 2012/02/17
Mark.jr
5
ナチスの司令官の宮廷で道化役をやるという、笑えない状況で可笑しなことをやらなければいけない前半部以上に、そこから脱出した後の展開の方が悲劇的なのが、実に悪夢めいています。現実世界にこのような人達がいたかもしれないのが怖いところです。2018/11/10
Mana
4
虐殺を生き延びたユダヤ人の話。暗くて重い。人間とは神の宮廷での道化師にすぎないのか?神は何を思って世界をこのようにしているのか?2012/07/22
takao
3
ふむ2024/02/25