山の郵便配達

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 214p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087733433
  • NDC分類 923.7
  • Cコード C0097

内容説明

山をゆく、川を渡る。歩いて、さらに山を越える。愛犬だけをお供に、数日がかりで重い郵便袋を背に村から村へと手紙を届けてきた老郵便配達。彼にも引退の時が来て、初めて息子をつれて最後の旅に出る。―美しい自然のなか、仕事と人生と親子の情愛の深さをしみじみ伝える感動の道行(「山の郵便配達」)。83年全国優秀短編小説賞、荘重文文学賞、湖南省第一回青年文学賞を受賞。いずれの短編も、現代の中国のひとびとが生き生きと登場して、とにもかくにも面白い。

著者等紹介

彭見明[ポンジエンミン]
1953年、中国湖南省平江県の農村に生まれる。俳優・舞台の電気技師や美術工、文芸指導者としてさまざまな仕事をし、96年から湖南省作家協会に勤める。80年から創作活動を開始し、本書表題作「山の郵便配達」で83年全国優秀短編小説賞、荘重文文学賞、湖南省第1回青年文学賞を受賞。湖南省作家協会副主席、一級職業作家。長・短編小説、エッセイなど著書多数

大木康[オオキヤスシ]
1959年生まれ。東京大学文学部助教授。東京大学文学部卒業、同大学大学院博士課程修了。著書は、『明末のはぐれ知識人―馮夢龍と蘇州文化』、『不平の中国文学史』など
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ペグ

71
大好きな映画だった。その原作本に出会う。短編集だがやはり表題作が一番印象的。年老いた郵便配達の父が息子にその仕事を引き継ぐ。険しい山を越え何日もかけて手紙や小包を届ける仕事。深閑とした森、険しい山道、冷たい川に脚を浸し。何処かで名も知らぬ鳥の声が疾る。かすかに聴こえる親子の息遣いと一匹の寄り添う犬の眼差し。喧騒から遠く離れた中国の、二人と一匹の静かな足取りが胸に迫る。2019/05/21

あじ

51
中国の山村を、天秤担いだ郵便配達人がゆく。森閑とした父と息子の凪いだ距離。屹立した犬の忠誠心。世代交代の儀式を粛々と執り行う父子の寡黙な背中と、犬が流した美しき一筋で、情動のすべてが一気に押し流される。表題作「山の郵便配達」は忘れられぬ一編になった。また「愛情」では萬話的面白さが加味され、男女の捨て鉢な色恋に微笑まずにはいられない。★3.8/5 2017/12/19

Willie the Wildcat

40
過疎化などの外的要因と、世代交代などの内的要因が齎す変化。変化を受け入れる心情過程の人間性。相手を想う心に文化の違いはない。印象的なのが『沢国』。義姉妹漁師の一日の始まりと終わりにおける朝陽・夕陽、そして草の”愛撫”が自然との共生と学びの象徴。次に表題。手紙であり、手渡しである点に意味。心を伝える姿勢。お供の犬の涙を拭く件・・・、心に響くなぁ。文化大革命の観点では『過ぎし日は語らず』。黙して語らずも真理は不変。師への感謝、学びの意義などを通した著者の暗喩は意味深。2015/11/20

まいぽん

25
人里離れた山の中とか、それほどでなくても地方の田舎の、田んぼや畑のわきで。ずっとそこで暮らしてきたおじいちゃんやおばあちゃんとちょっと立ち話、みたいな場面ってテレビでよく見る。そういうとき、その人たちの自然な表情にひどく感動する。自分たちの暮らしを、人生を受け入れて、満ち足りているかまではわからないけれど、絶対的な安定感、に表現することが難しい美しさを感じる。その感じと近くて、もっと素朴な、人間の営みを描く短編集。映画を見てみたいな。どの作品もみな良い。「沢国」の時間とともに変わる情景の描写が素晴らしい。2020/09/18

なにょう

16
よい。①表題作。有名だが、50ページに満たない小品。世の中、コツコツ頑張る人々に支えられているんだ。今もまさか、数日かけての郵便配達員は存在するのか。しかし、学校に数時間かけて通学する人達は全然いるもんな。煌びやかな上海、広東省もあれば、南方の山岳地帯の隔絶された村々もある。②沢国。ただただ洞庭湖の漁民の生活の描写。湖南省は魚米の国。⑤愛情。朴念仁が最後幸せを手に入れる。たまには現代のお伽話も良い。★中国文学は余りに現実過ぎ、アクの強さに辟易することもあるが、こちらは中国の現実主義もほどほど、面白い。2020/03/07

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/68697
  • ご注意事項