内容説明
英国商社シングル＆シングル社の重役が、トルコの丘で銃殺された。時を同じくして、同社社長の孫娘の信託口座に、スイスの銀行から五百万ポンドもの大金が匿名で振り込まれる。度重なる異常事態から、社長である父の身の危険を察知したひとり息子のオリヴァーは、過去の確執を越えて、失踪した父親の行方を追うが…。混迷するロシアを背景に、冒険小説の巨匠が、父と子をめぐる愛憎を濃密に描く傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
103
訳者あとがきを読んで、ル・カレが読みづらいと感じるのは私だけじゃないと知って安心した。勿論読み易いのが傑作で、読み辛いのが駄作という訳ではない。冒頭で惨殺される人物の心境と同じく、読者として何が起こっているかわからないまま、主人公オリヴァーの過去を交えながら、彼の旅を辿る。犯人は金が動機であるのは確かだが、しかしここまでするかな。タイトルは父子共同経営の社名であり、父子の物語でもあることを示す。弁護士からマジシャンに転身のオリヴァーのキャラは魅力。敵のホバンはゾッとする。2019/09/29
NAO
58
商社シングル&シングルの法務部長が銃殺される場面から始まるが、マジシャンのオリヴァーはこのシングル&シングルの社長の息子で、かつては弁護士として働いていたが、父親のやり方に反発、父親の前から姿を消していたと分かる。失踪した父親を探すというオリヴァーの動きとともに過去の出来事が少しずつ分かってくるという展開で、読みにくい上に物語の全容がつかめるまでに時間がかかる。泥棒まがいのオリヴァーの父親は、ル・カレの父親がモデルだという。オリヴァーの過去で語られる父子間の確執のリアルさは、実体験だからこそなのだろう。2023/04/28
yooou
6
☆☆☆☆☆ やめられない。とまらない。なんと面白い本だったことか2023/05/14
sohara
3
原作の刊行は1999年。つまり、ソ連崩壊に伴い、それまでの世界秩序がダイナミックに変容しつつあり、しかし、9.11はまだ起きていない20世紀最後の年。主人公オリヴァーは、いわば現代の泥棒男爵の跡継ぎであり、対するは、ロシア・マフィアのボスの娘婿という構図。この全体像が判然とするまで三分の一ほどもページ数がかかり、目隠し状態で読まされるのはいささか辛かった。それでも、オリヴァーも、彼に関わる英当局側のブロックやアギーも好感度の高いキャラクターなので助かった。成り上がりの父を持つ息子の苦労話です。2014/07/14
おふねやぎっちらこ
2
調子が出るまで時間がかかり読了まで３ヶ月もかかったが，残りの５分の１ぐらいは早かった。2002/09/23
