内容説明
男には名前がなかった。ひどく痩せていて、人前では声を出そうとしなかった。患者第3119号。人々は密かに“狼男”と呼んでいた。烈風を伴った雨が窓を激しく叩き、男はうずくまり震えだした。その時、女は手を伸ばし、男のコートの袖に触った。指の温もりが男の肌まで届いた。それは同情だったかもしれないし、何かほかのものかもしれなかった。女は長年暮らした夫との生活に傷つき、疲れていた。女は男を外に連れ出した。それが犯罪になることはわかっていたが…。狼に育てられた青年と年上の女性、奇跡のラブ・ストーリー。