内容説明
不朽の名著『エセー』の作者ミシェル・ド・モンテーニュの精神はいかに形成されたか。〈塔〉に隠棲し、思索の日をおくるモンテーニュを描き、時代を現出させる。長編「モンテーニュ」三部作、第2部。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
23
第2巻は,37歳で城館に帰り『エセー』の執筆を始めてから,腎臓結石の発作(45歳)を経て『エセー』初版全2巻を出版する(1580年47歳)まで.ただし,城館に隠棲して執筆に専念したのではなく,宗教戦争の激動の中,仲介者として奔走していたという.第2巻前半の圧巻は,サン・バルテルミーの虐殺(1572年)に至るまでの政治的緊張と,事件後の混乱の叙述だろう.その後も,政治状況の叙述が詳しく,「モンテーニュの伝記」というより,「モンテーニュの時代」と題すべき本であるような印象さえ受ける.→2021/11/25
かんやん
3
モンテーニュの伝記第二巻。欧州情勢は複雑怪奇、といってもルネサンスの時代の話。大国同士のいさかい、小国の思惑、政略結婚に身内同士の骨肉の争い、宮廷内の謀略、それに宗教改革が絡んで、混沌としている。映画や娯楽小説ではとても捉え切れない歴史の底深さ、人間の業の深さ、愚かさ、わけのわからなさがこれでもかと描かれる。悲惨の極みがサン・バルテルミーの虐殺。こんな時代を絶妙なバランス感覚で切り抜け、思索を深めてゆくモンテーニュが自ずと慕われてくる。2015/03/08