出版社内容情報
「会社の不利益になる人間を採る」
不当辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始める――。
(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。
ボディ・ビルを描いた『我が友、スミス』で鮮烈なデビューを果たした著者が、本作では「就活」に隠された人間の本音を鋭く描く!
【著者プロフィール】
石田夏穂(いしだ・かほ)
1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー。同作は第166回芥川龍之介賞候補にもなる。他の著書に『ケチる貴方』がある。
内容説明
顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶと「入社三年以内の退職率」が上がる。(株)Kエンジニアリングの新卒採用チームの小野は、自身が辿り着いた評価軸をもとに、業務に邁進する。黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった…。
著者等紹介
石田夏穂[イシダカホ]
1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiace9000
169
鋭い洞察とともに描く『就活(新卒採用)』の舞台裏。「悲哀」と「自虐」と「諧謔」に徹底してこだわり、淡々と捏ね上げると、こんな独特の"おかしみ"を味わえる作品に仕上がるなんて…。デビュー作かつ芥川候補となった『我が友、スミス』は恥ずかしながら未読だが、完全に「読まねばモード」オン。終始語り手、元エンジニアで「人事部の小野さん」の独り言。その苦みの効いた毒舌が妙に本質を突いていて、この"くすぐり感"がクセになる。蛇蝎の如く「縁」を嫌う彼女が、隠匿した舌鋒に「縁」を乗せたとき、内に秘めた矜持を垣間見た気がした。2023/09/20
R
146
シュールな笑いのある短編だった。採用担当の閑職に飛ばされた主人公が、後ろ暗い復讐心を抱き、会社が長期的に不利となるような人事をこつこつ進めていく話が、人事あるあるや採用あるあるでデコられてるのが面白い。主人公の暗い活動が、傍目では極めて優秀な社員の仕事に見えるというギャップも面白いのだけど、最終的に何が目的だったのか、なんか妙な決断を迫られるようなラストになっていて、そこが無暗にドラマチックで感動と笑いを同時に味わった。人間らしさというか、共感とも異なるおかしみがよい。2023/11/30
fwhd8325
135
淡々とそして濃密に描かれた面白い作品でした。テキスト本のようなボリュームで、あっという間に読み終えました。2024/02/18
NADIA
110
文句のない面白さ👍 新卒入社した会社で充実した会社員生活を送る小野。しかし、ほんの些細なことで花形部署から人事部に異動させられる。不満を抱く彼女が「会社の不利益となる人間を採る」という目的のもとに考えだした「顔面の黄金比による合否判定」。いやもう、目からウロコの説得力だよ。瞬時に能力・人柄を判別するってそれしかないよね(´;ω;`) 運と縁の世界だ。就活生は 朝井リョウ『何者』 浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』と、この作品を読んで臨んでほしい。就活をテーマとした三大傑作とワタシ的認定✨2024/02/23
ちゃちゃ
104
人は何を以て人をジャッジするのか。本作では、新卒採用時における評価軸という視点から迫る。客観的で総合的な判断って何?勘や経験値に頼る曖昧な主観で優劣をつけるの?小野が不本意な形で人事部への異動辞令を受けて10年。会社への復讐を目論む彼女が、採用時に重視するのは、能力や面接時の印象等ではなく、応募者の顔の黄金比だったとは…。“ご縁”という無責任かつ不誠実な言葉で誤魔化すよりも、明快な“黄金比”で。なるほど!石田夏穗作品の斬新な切り口には毎作新鮮な驚きを覚える。就活の実態を辛辣かつユーモラスに描いた快作だ。2023/12/27