出版社内容情報
「人を好きになる気持ちが分からないんです」
海松子(みるこ)、大学一年生。
他人に興味を抱いたり、気持ちを推しはかったりするのが苦手。
趣味は凧揚げ。特技はまわりの人に脳内で(ちょっと失礼な)あだ名をつけること。
友達は「まね師」の萌音(もね)、ひとりだけ。
なのに、幼馴染の同い年男子と、男前の社会人から、 気づけばアプローチを受けていて……。
「あんまり群れないから一匹狼系なんだと思ってた」「片井さんておもしろいね」「もし良かったらまた会ってください」「しばらくは彼氏作らないでいて」「順調にやらかしてるね」
――「で、あんたはさ、高校卒業と大学入学の間に、いったい何があったの?」
綿矢りさデビュー20周年!
他人の気持ちを読めない女子の、不器用で愛おしい恋愛未満小説。
【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。
2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。
2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。
2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。
2020年『生のみ生のままで』(上・下)で第26回島清恋愛文学賞を受賞。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
446
主人公の海松子(名前からして変わっている)の一人称で語られてゆく物語。彼女は大学生になるまで、ほとんど他者とは深くかかわることなく過ごしてきた。孤独癖があるわけではない。彼女にとってはその必要がなく、自身では違和感も持ってこなかった。そんな彼女が両親の意思から大学進学を機に一人暮らしをはじめ、物語は徐々に動き出す。数少ない友人の萌音との絡みが面白い。奏樹と諏訪の二人の男性との関係も、海松子を変えてゆく起爆剤だ。全体としては、よくわかるような、わからないような小説なのだが、しいてテーマを求めるならば⇒2024/01/26
starbro
353
綿矢りさは、新作中心に読んでいる作家です。著者のデビュー20周年記念作品は、大学生に戻ったような雰囲気のちょっと変わった青春譚でした。タイトルにこういう形で結びつくとは・・・ https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/auranohappyokai/2021/10/06
さてさて
307
集団社会の中で生きていく他ない私達は、日々起きた瞬間から眠りにつくまで、数多くの人たちとの関係性に意を尽くして生きています。そんな社会に誰もが当たり前のように順応できるわけでもありません。また、ただ素直に順応していけば良いというわけでもないでしょう。この作品の主人公・海松子が見せてくれたひとつの生き方は生き辛い世の中を生きる私達に、ふと肩の力を抜くことを教えてくれました。「オーラの発表会」というこの作品。それは、人と共に生きていく人の中で生きていく私達の気持ちをふっと楽にさせてくれる、そんな物語でした。 2021/10/06
hiro
202
綿矢さんの作品は新刊が出れば必ず読んでいるが、今回も綿矢さんらしく主人公・海松子(みるこ)は女性だ。前半、趣味は凧揚げという大学生になった海松子の周りの人たちとの距離感にこれからの大学生活が心配になったが、高校時代からの友人“まね師”、海松子に好意を寄せる男性二人、そして両親との関係などが明らかになるにつれて、個性的であるが周りの人たちから愛されている海松子が見えてきて、男性作家には書けない綿矢さんだから書ける主人公の個性が光る作品だった。謎だった「オーラの発表会」は、結果的にはあの結末で良かったと思う。2021/10/01
とろとろ
200
他人に興味が持てない大学生の主人公。友達はひとりだけ。幼馴染の同い年男子と男前の社会人からアプローチを受けていることすら気がつかない。主人公の目線で始まり、また章立てで人物が変わるのかと思っていたが、そのままだった。いや、これは……「コンビニ人間」以来の衝撃!。考えてみれば、世間が勝手に抱いている常識を、逆に全てひっくり返すような話になるのだろうか。そうして見ると、作者の考えはデビュー以来一貫していてブレがなく、読む側がいつも翻弄されてしまうのだ。疲れ切った頭をリフレッシュするのには丁度良い話だと思うな。2021/12/06