内容説明
勤務先の社長と密かに付きあう華。彼の妻の入院で、ふたりの関係は変化する。そんな華が思い起こすのは「母が死体にキスをした」遠い日の記憶。老いゆく母にも秘められた物語があったのかもしれない。揺れる心を細やかに描く恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
43
「母が死体にキスをした」という書き出し。まだ物心つくかつかないかの頃の記憶。喪服ではなく黒いサラサラしたドレスに身を包み、見知らぬ男が横たわる祭壇へと歩み寄る母親。大人になった華は思う「老いゆく母にも秘めた恋があったのかもしれない」と。同じ会社の社長・能見と不倫関係にある華。ただの不倫の恋なら簡単だったのに、気がつけば4年、恋は愛になっていた。「奥さんには負けない、あの人は私だけのもの」みたいにドロドロしてはいない。淡々としている分、それが何だか切ない。理性では止められない愛に、ほろほろと心を燃やす物語。2014/02/16
あつひめ
41
女の人生で一番揺れの激しい年頃が３０歳前後かもしれない。まだまだともうという気持ちが心の中を行ったり来たり。恋と愛の違いに気付きつつ蓋をしていたものが一気にぶっ飛んだ時、一番に考えるのはこれからの未来。世間には甘い言葉を簡単に吐く男が多い。甘い夢を見させるように。逆に一緒にはなれないが特別な存在だとこれまた理解しがたい言葉を吐く者もいる。女は頭よりも子宮で物事を判断する生き物。そう簡単に割り切れるものでもない。愛人も・・・妻も。ありきたりに言えば、出会いが遅すぎた。でも早くてもこんな関係にはなれないかも。2012/10/28
coco夏ko10角
33
この社長、社内に奥さんと愛人がいる生活を何年も…ってその精神力がすごいわ。栗田さんだからよくある不倫小説とはちょっと違って、ちょっとずれてる（ずれていく）ものが読めるかと思ってたけど、結構淡々と。そんな中で主人公のお母さんのキャラが効いてくる。2016/10/27
ブルームーン
31
４年前から社内不倫をする主人公。不倫相手の奥さんが病気になり、衰弱する姿を見ているうちに、自分のしている事の罪悪感に打ちひしがれていく。しかし彼の事が愛しくてキッパリと別れる事ができず、一人で悶々と悩み続ける。読んでる方まで悶々としてしまった。読後感もあまり爽快感を得られず・・・・。2014/10/15
マリカ
28
不倫って、もうやめた方がいいと気づいても、終わらせるのは本当に本当に大変だろうけど、う〜ん、華ちゃん、もやもやし過ぎよぉ。私は、途中まで、奥さんの入院中に、社長さん過労死で、不倫もいきなり結末を迎える→新しい一歩を踏み出すしかないってストーリーかな？って予想してたけど、仕事辞めただけだったね、華ちゃん。華ちゃんにカヨちゃんがいてくれてよかった。私が不倫するなら終わる時はもうちょいアクティブにいきたいな。でも内心を細かく描写したら、結局は華ちゃんみたく本一冊分になってしまうのかも。2011/12/10
