出版社内容情報
大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。欠けた心を抱えたふたりが少しずつお互いを知り、日常の中で歩み寄っていく道のりを描く。他者と生きることの温かみに触れる長編小説。
窪 美澄[クボミスミ]
内容説明
家具職人の壱晴は毎年十二月の数日間、声が出なくなる。過去のトラウマによるものだが、原因は隠して生きてきた。制作会社勤務の桜子は困窮する実家を経済的に支えていて、恋と縁遠い。欠けた心を抱えたふたりの出会いの行方とは。
著者等紹介
窪美澄[クボミスミ]
1965年東京生まれ。フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」で、女による女のためのR‐18文学賞大賞を受賞。受賞作を所収した『ふがいない僕は空を見た』がヒット作となる。同書で11年に山本周五郎賞を受賞。12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
534
窪美澄は、新作中心に読んでいる作家です。期待して読んだのですが、極めてオーソドックスな昭和の恋愛・結婚小説でした。もう少しサプライズが欲しかったなぁ。2017/04/13
風眠
475
死んだ人には敵わない、と思う。もう生きられない人は、思い出という過去の中を生き続ける。美しいまま、生き続ける。けれど人は、ひとりでは生きてゆけない。過去にとどまったままでもいられない。様々な想いを乗り越えて、葛藤や迷いを振り切って、美しい思い出を胸に置いたまま、また誰かと日々を生きる事ができる。大切な人の死を乗り越えられなかった壱晴と、恋のしかたを知らなかった桜子。お互いの過去も現実も受け容れて、ふたりは固く手をつなぐ。やめるときも、すこやかなるときも。どんなでこぼこ道でも、ふたりで歩き続けられるように。2017/11/06
おしゃべりメガネ
363
またひとつ素晴らしい作品と出会えました。既に実力は疑う余地のない窪さんですが、本作はこれまでとは全く違った作風で数ある窪さんの作品の中でも文句なしにダントツで好きな作品になりました。これまで窪さんの独特な世界観や作風にアレルギー気味だった方も本作だけは是非手にとっていただきたい作品です。ミステリーでもないのに先が気になって読むのが止まらない恋愛ものもなかなかないのではないかなと。登場人物の皆さん全てが温かく、人間味に溢れ、家族や友人などココロから大切にしたい人、すべき人を気付かせてくれる温かい作品でした。2017/05/05
bunmei
335
窪さんの作品は官能的描写や少年犯罪などの過激なテーマで描かれる事が多かったように思います。しかし、今回の作品は、繊細な心の葛藤と共に、相手の気持ちを推し量りながら寄り添って、通いあう気持ちが丹念に描かれていて、窪さんの新境地の作品と感じました。 昔のトラウマを抱えた家具職人の男子と恋愛に不器用で未だ処女のアラサー女子。お互いに抱えた面倒な心の傷をさらしあいながらも、次第に歩み寄って行く恋の行方に、一応援団として読み進めました。 題名の『やめるときも、すこやかなるときも』について、最後は納得でした。2017/05/12
のり
307
壱晴と桜子の出会いは決して互いに惹かれるものではなかったが、二度目の出会いが流れを変える事に…家具職人である壱晴は、仕事に妥協しない向上思考の人物だが、ある時期になると声が出ない症状に悩まされる。誰にも過去のトラウマを語ってこなかったが、桜子に対して全てを打ち明ける事に…彼女自身も色々と悩みを抱え、恋愛に対しての思い入れが歪んでいる処も…それまでの環境や出来事で誰もが悩み苦しむ事はある。お互いを必要とし、理解仕合、想いやる心が二人の成長を助長してくれる。壱晴は良き師匠と仲間に恵まれ幸せ者だ。2017/10/12