内容説明
雄大な自然のなかで自責の念から蘇ったファウストは、皇帝の城、古代ワルプルギスの夜、ヘレナとの家庭生活、皇帝軍と反乱軍の合戦、海辺の領地での干拓等、大宇宙の生命の諸相を体験する。やがて人生の“夜ふけ”を迎えたファウストは見えない目で自分の大事業を見とどけようとしながら、思わず「時よ、とどまれ」と口にする。死んだファウストの魂が、天使たちと“かつてグレートヒェンと呼ばれた女”の導きで聖母マリアの許に救済される。
著者等紹介
ゲーテ,ヨハーン・ヴォルフガング[ゲーテ,ヨハーンヴォルフガング][Goethe,Johann Wolfgang]
1749.8.28‐1832.3.22。ドイツのフランクフルト・アム・マインに出生。ヨーロッパ社会の近世から近代への転形期を生きた詩人、小説家、劇作家。また、色彩論、動植物形態学、鉱物学などの自然研究にも従事、さらにワイマール公国の宮廷と政治、行政に深く関わる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
54
訳が読みやすいのでさらりと読み終えてしまったが、とても奥の深い壮大な話だ。拙い挿絵をよく見ると非常に意義深く、その場面をよく表している。悪魔メフィストを呼び出すのも契約を交わすのもファウストだが、これは悪魔と神との話で、ファウストはその道具にすぎなく思える。悪魔は契約通りに、ファウストにいい夢を見させた。ただ少し油断をすると、神の容赦ない反撃にあうのだ。ゲーテの描きたかったものを私はどのくらい理解できただろう。次は他の方の訳でもじっくりと読んでみたい。2014/03/10
燃えつきた棒
34
第一部の感想の冒頭に、フーコーの『ファウスト』礼賛の言葉を引用したが、全編を読み終えてみて、フーコーの言葉にはどうにも首肯しかねる。 僕には、ロマン・ロマンの「フランス革命劇」(ロマン・ロラン全集 (9)・(10):フランス革命劇 1・2/みすず書房)の方が、戯曲としてはるかに優れていると思える。 フーコーの「哲学的伝説」という賛辞にしても、この作品の哲学性については今一つピンと来ない。/ また、この戯曲は悲劇と銘打っているが、僕にはむしろ、ファウストをはじめとしてメフィストや魔女に至るまで全員が、➡︎2025/05/08
かふ
21
ゲーテの錬金術は言葉によって世界を構築する。それは悪魔主義的なギリシヤ神話の劇詩のパロディなのか。ゲーテの後期の知識の集大成であるという。解説にそのプロセスが紹介されているのでそれを参考にして読むのが理解が早いかも。ただゲーテのギリシヤ悲劇の知識は直接ギリシヤ神話を読んで知っていた方が面白いかも。登場人物の名前からそれらのギリシヤ悲劇が連想される。ヘレナはホメロス『イリアス』の登場人物だという(エウリピデスの「トロイアの女たち」)。2024/06/24
くみ
19
第2部はほとんど神話の世界のよう。歌うように流れていく。場面展開がめまぐるしく、歌っていたと思えば、戦争のシーンになり、お金の話になったりするのだが池内ファウストは終始甘くロマンティック。読後の余韻もそのまま残る。さらさら流れるようで初読時の荘厳さは感じなかった。「時よ止まれお前は美しい」のセリフもさらっと流されていたので、読了後に探しにいったほど。これも「ファウスト」か。甘いふわふわしたお菓子を食べたようだった。2018/10/08
田氏
13
ファウストが時空も伝説をも飛び越えて飛び回る第二部。そこに人造人間(ホムンクルス)の誕生やら、さらには金本位制から国債本位制への転換みたいな経済の話まで入ってきて、登場人物や合唱隊はあいも変わらずのガヤガヤどんちゃん。この作品、名前だけは知っていたけれど、こんなにもお祭り騒ぎだったのか。ここまでの展開といい、その末に向かえる結末のご都合感といい、異世界チートものだこれ、とすら思える。まあ、そもそも伝説とか神話のほとんどはチートものなのかもしれない。というわけで、わりかしキャッチ―でポップなのだ、この物語。2024/03/04