内容説明
ブルームは、馭者溜り(喫茶店)へスティーヴンを連れて行き、モリーの写真を見せて紹介する。午前二時、二人は音楽談義に興じながら、ブルームの家に向かい、ココアを飲んで、別れる。ブルームが眠りについた後、モリーは考える。Yesで始まる長い回想と独白は、やがてこれまでの人生、自分が知る限りのブルームの人生におよんで行き、ブルームを許しつつも多義的で混沌としたYesで閉じられる。(第16挿話~第18挿話)。
著者等紹介
ジョイス,ジェイムズ[ジョイス,ジェイムズ][Joyce,James Augustine Aloysius]
1882.2.2‐1941.1.13。アイルランドのダブリン郊外で出生。20世紀を代表する作家であると同時に世界文学史上の巨星。幼児からカトリック系の教育を受け、ユニヴァーシティ・コレッジ・ダブリンを卒業。1904年秋、ノーラ・バーナクルを伴って、ヨーロッパへ。以後、貧困のうちにトリエステ、パリなど各地を漂泊し、チューリヒに死す
丸谷才一[マルヤサイイチ]
小説家。1925年鶴岡市生れ。東大英文科卒(卒業論文はジョイス)
永川玲二[ナガカワレイジ]
評論家。1928年米子市生れ。東大英文科卒(卒業論文はシェイクスピアのソネット)。都立大助教授を経て70年よりスペイン在住。2000年死去
高松雄一[タカマツユウイチ]
英文学者。1929年室蘭市生れ。東大英文科卒(修士論文はイェイツ)。東大教授を経て2000年まで駒沢大教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
127
宗教への懐疑〜カトリック、ユダヤ、無宗教。父性への憧れ〜自らの投影と思われるスティーヴンを見守るブルームのような人物に、こんなふうに想って欲しかったという願望。女性の純潔や女性を理解するための定義〜肉体的不貞と精神的愛情とをブルームやモリーに定義させる。ダブリン、アイルランドへの憧憬、否定、肯定。要は、宗教・父性・女性・故郷への愛憎・葛藤を、まともに見据えて正面から対峙せず、様々な文章の形をとらせて斜めから見据えた形で表現した。世間への問題提起でなく、あくまでも自分の中の葛藤の吐露であると、私には思えた2017/09/17
のっち♬
93
16章は勿体ぶった口調で回りくどい表現が特徴的。時に言い淀んだり、いい加減なことを言ったり、混乱気味になったりと語りに人間味を感じさせる。17章は教義問答形式で格調高く、ブルームの葛藤の表現にマッチしているが、過度な理屈っぽさに滑稽味がある。18章は入眠前の妻の独白で、「彼」や「yes」など単語の表すニュアンスを行単位で変化させ、取り止めのない思考を辿る。単語一つにも次第に多義的な意味合いが出てきて、不思議な感慨と酩酊を覚えた。読むことの可能性を追求し、言語感覚の幅広さと鋭敏さが発揮された野心溢れる傑作。2021/01/11
zirou1984
44
世紀の言語遊戯物語、遂に完結。小説が語りうるもの全てを詰め込もうとした本作を読みながら、自分は語り得るものについて考え抜き、晩年は言語ゲームに取り組んだウィトゲンシュタインの事を何度も思いだしていた。そういえばナポコフやボルヘスだって、語感や響きを楽しんだ言葉遊びの達人だ。そう、私達の言葉は時に、意味の重さに押しつぶされ、疲れきってしまっている。翻訳の向こう側に存在する言語感覚の快楽、それはブルームさんの残念な性癖以上にユーモアで満ちていた。難解さの彼岸で見えた楽しむことの喜び、それを何より大事にしたい。2013/07/30
みつ
42
ここ1週間余り、他の本に寄り道することなく、『ユリシーズ』に集中しての再読完了。4冊目は馭者溜りでのスティーヴンとブルームの対話が続く第16挿話から。日付を跨ぎ6月17日の深夜に入る。続く第17挿話は、煩瑣極まりない問いと答えが延々続くもの。終わり方が意表をつく。最後の第18挿話は、ペネロペイアに擬えられたブルームの妻モリーの内的独白が句読点なし、行替えも100ページを超える中で7回あるだけで語られる作品中最大の難所。「彼」が誰を指すかを訳注を読みながら懸命に追うことに。河出書房の全集で数十年前読んだ➡️2024/06/25
Major
38
【第1章:疲弊する言葉と不完全な調和ー「エウマイオス」における文体の機能】 No.5:アイルランドの狂信的なナショナリズム(祖国)という「父的秩序」から命からがら逃れてきた身である。彼にとって、ブルームが差し伸べる無条件の優しさや市民社会への適応の勧めは、救いであると同時に、自らの芸術家的孤高を再びからめ捕ろうとする「新たな秩序(父)への従属」という誘惑、あるいは脅威としても機能する。二人の会話は、アイルランドの経済、科学、芸術、社会改善など多岐にわたるが、その実態は驚くほど噛み合っていない。→2026/10/20




