内容説明
詩人ダンテが、現身のまま、彼岸の旅を成就する物語『神曲』。「地獄篇」は、1300年の聖木曜日(4月7日)に35歳のダンテが、罪を寓意する暗い森のなかに迷い込むところから始まる。ラテンの大詩人ウェルギリウスに導かれて、およそ一昼夜、洗礼を受けていない者が罰せられる第一圏(辺獄)にはじまり、肉欲、異端、裏切りなど、さまざまな罪により罰せられる地獄の亡者たちのあいだを巡っていく。
著者等紹介
アリギエーリ,ダンテ[アリギエーリ,ダンテ][Alighieri,Dante]
1265‐1321。イタリアの詩人。フィレンツェに生まれる。百科事典的な知識の集成を物語に織りこんだ不滅の古典『神曲』を著して、ヨーロッパ中世の文学、哲学、神学、および諸科学の伝統を総括し、またルネサンスの先駆けとなった。フィレンツェの市政にも深くかかわったが、1302年、政変により永久追放の宣告を受ける。以後、放浪のうちに執筆を続け、ラヴェンナで没した
寿岳文章[ジュガクブンショウ]
1900~1992。神戸市生まれ。京都帝大卒。英文学者、書誌学者、和紙研究家。龍谷大学、関西学院大学、甲南大学の教授を歴任。『神曲』訳により、1976年読売文学賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
105
ダンテの一大叙事詩の1冊目、読み切ったという感じです。罪の寓意の象徴の場を地獄と称し、そこを現身のままさまようことになったダンテ。大詩人ウェルギリウスに導かれるまま彷徨う世界は肉欲、異端、裏切りなどキリスト教においては排除されるべき対象で満ちあふれていると言えるでしょう。地獄の亡者たちの世界には秩序などは存在しておらず、残酷且つ憐れみが見られるのが印象的でした。ブレイクの絵も堪能できて満足です。煉獄変へいきます。2017/08/03
優希
60
ダンテの一大叙事詩の序章と言えるでしょう。罪を寓意する暗い森の中に迷い込んだダンテ。大詩人ウェルギリウスの導かれるまま彷徨う世界には様々な罪で罰せられる人々が集まり、キリスト教では排除される対象であるように思いました。残酷で憐れみの世界を見た気がします。2020/10/09
syaori
51
ウェルギリウス先生の著作を読んだところで、ダンテと共に私も先生と「高い御座」を目指す旅を始めることに。ルネサンスの先駆けとなったという本書ですが、地獄篇でまず目を奪われるのが地獄の豊かさ。ホメロスに、彼がその勲を歌ったアキレウス、イスラムのアヴェロエスや騎士道の花トリスタンもいて、ハルピュイアが飛びケンタウロスが駆け巡る。この豊穣さはこれから花開くルネサンスの豊かさを予感させるよう。ダンテが腐敗した世を嘆き、同時代人や教皇をも地獄に落としているところに当時の暗い部分を感じつつ、地獄を抜けていざ煉獄の山へ!2018/05/21
金吾
25
○キリスト教の地獄のイメージがよく伝わります。この本を読むともっとちゃんと生きなければならないと思います。話は面白いですが、洗礼していなかったり異教徒が地獄にいるというのは恐ろしさを感じますが、キリスト教においての罪がわかりやすく書いています。2022/03/07
ヴェルナーの日記
21
著者ダンテの『神曲』に、詩人&画家でもあったブレイクの挿絵が編まれている。とても贅沢な一冊(原画は彩色しているのでカラーでないのは残念)。本作は3部作の『地獄篇』は、キリスト教にとっての異端者・破門、反逆者たちが落とされるところ。主人公ダンテは、心の師であるウェルギリウスの励ましによって、生きたまま地獄の最下層へと向かう。読者は、著者ダンテの広範かつ深層な知識に圧倒される。少なくとも旧約・新約聖書に精通し、ギリシャ神話から当時のイタリア史を知っていないと本書の本当の意図が読み込めない孤高な一書といえよう。2014/06/21